【A3!】寄り道しすぎでは。 (ページ1)

今日:6 hit、昨日:8 hit、合計:8,051 hit

1.トリップページ1

どうか、お願いします…!

今回のスカウトで、もう何十回まわしたか分からないガチャを回す。
何回やっても、私の最推し、月岡紬さんが出てくれない。

あまりに出なさすぎて、今日は紬さんの好きそうなお花がたくさんあるカフェで、タマゴサンドを食べながらガチャを回している。

金色に輝く黒子が4人いる画面に私の心は高鳴る。

こんなにおるんやったら、さすがに出てくれるはず…！

次々と開いていくカードに心臓が早くなる。もう何十連もしてるのに本当にでない。今回のスカウトのSSRはもう開花済みというのに、紬さんだけきてくれない。
私はいつもそうだ。紬さんだけは、RでもSRでもSSRでもきてくれねい。

『うぅ、物欲センサー働きすぎ…それか、紬さんに嫌われてるんかな…。』

ガチャの結果に唇を噛みしめる。

あ、またSSRや…私ってほんまに運いいな…。
悲しい…。

前回の紬さんが報酬だったイベントも、タイミングが悪く全然走れなかった。
新卒で社会人になり、1週間目のイベントだったのだ。心にも時間にも余裕がなく、携帯も触れない私に報酬を得ることは当然、できなかった。

こんなに推して愛が強いはずやのに、なんで紬さんに会われへんの…？かなしい、泣いちゃう。
友達のガチャ神にまわしてもらおうかな。

ガタリ、と席を立ち『ありがとうございます、美味しかったです。』とお会計を済ませる。

感謝と挨拶は必ずする、これは高校生の頃からハードにバイトしてきた私のモットーだ。
ありがとうっ言ってくれるお客さんがいるだけで、仕事は何倍も楽しくなることを私は知っていた。

紬さんも、絶対ありがとうっていうタイプやな…
店員さんに挨拶する紬さん、なにそれ可愛い。

自分の妄想に口角が上がり、幸せな気持ちになる。

ガチャがでなくても、妄想で私は幸せやからもういいもん…。
妄想で会えるもん…。

カランカラン、とドアのベルを鳴らしてお店をでると、『紬さんに会いたい…』と思わず声が出た。

さ、家帰ろ。
切り替えは大事、明日からまた仕事やし。

ポジティブな私は帰路についた。しかし、そこには私の知っている道は無かった。

何を言ってるか分からん？大丈夫、私も分からん。

あまりにも訳が分からなくて混乱する。
来たはずの通りはそこに無く、あるのは全く知らない道。右を見ても左を見ても、私の知っている道はない。

後ろを振り返ると、先ほどまでいたカフェが普通に存在している。