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「明日の行先は?」
一足先にベッドに入った私は、同じ部屋の鏡の前にいる彼に話しかけた。
「九州だね〜」
「飛行機?」
「うん」
機内は乾燥するから、いつもより多めに化粧水付けとくんだって。
この前、「そんな量じゃ足りません!」ってメイクさんに怒られたらしい。
「そのメイクさんに見られたら、私も少なすぎって怒られちゃうかな?」って彼に聞いたら、「そうだね」って笑いながら言ってた。
「私ね、会議中に時計見て『今頃、ひろくんは大阪の上あたり飛んでるかな』とか『そろそろ食レポタイムかな』って想像するの好きなんだよ」
「仕事に集中しな〜?」
その笑顔でカバーされてるけど、意外と辛口。
私をむやみに甘やかさない。
ま、それも彼らしいんだけどね。
彼がよいしょ、と立ち上がる。スキンケアが終わったらしい。
「電気消すよ」って声をかけてくれて、「うん」と答えた。
同じベッドに入った彼が掛布団をかぶったら、次は何にも言わずに私の手を握った。
「ねぇAちゃん」
「うん?」
「俺もね、想像しなくはないんだよ」
「例えばどんなこと?」
「Aちゃん、寂しくて泣いたりしてねぇかな〜とか」
意外だった。ひろくんがそんなこと考えてたなんて。
ついでに、「してねぇかな」などとくだけた言葉を聞いたのも、ちょっと久々。
こういう意外性に慣れることはなくて、胸がどきんとする。
「えー!嬉しい」
「嬉しいんだ?」
「私の事考えてくれてんのが嬉しいよ」
「そっか」
ふふっと笑ってから、また何も言わないで、今度は私の頬にキスをした。
「見えてるの?暗いのに」
照れ隠しに言葉数が多くなる私。
彼には「うーん?」と曖昧にはぐらかされる。
「あ、何食べたい?九州のお土産」
「ひろくんが食べたいと思うものが食べてみたいな」
どんなものでもいい。
彼の隣にいられるだけで幸せになれるから。
「今キスしようとしたでしょ」
「えっ、バレた?やっぱひろくん見えてるじゃん」
会話の途中でお返ししようと思ったのに、あえなく失敗。
「俺が気づいてないと思ったんだ?」
と言って笑ったかと思ったら、いつの間にか私の口は彼の唇で塞がれていた。
彼はとっても不思議な人。
私はひろくんに満たされるほど、底なし沼のようにもっとほしくなってしまう。
なんて貪欲な幸せ者なんだろう。
ルピナスもよう -END-
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すず(プロフ) - リクエストに応えてくださりありがとうございます!寂しいですが、残してくださった作品をこれからも読み返させていただきます。大好きです。 (9月25日 10時) (レス) id: e84de64e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨーリン | 作成日時:2023年4月27日 0時