私は元気だよ?side流司 ページ5
蓮美が、出演していた舞台の千秋楽公演を終えた直後に病院に運ばれたと聞いて、俺は肝が冷える思いだった。
蓮美は親しい友達だし、体が弱い。共演していたときも、時折発作を起こしていた。そんな蓮美に、俺は背中をさすったり、吸入器を当てたりして、助けてきた。
最近では発作も少なくなって、安心してた。その矢先、これだ。
気持ちが落ち着いた頃に、蓮美のブログを見た。肺炎も発症しているとは…。
『必ず戻ってきます』の言葉から、彼女がいかに不安なのか、つらいのか伝わった。
お見舞、行かなきゃと思った。
蓮美が入院してる病院と、病室を聞いて、すぐさま駆け付けた。
病室の扉の横に、『三条蓮美様』と書かれたものを見つけた。ここだ、と扉をゆっくりとノックした。
「蓮美、入るよ?」
「……………どうぞ」
呼びかけると、弱々しい声が返ってくる。少し辛くなった。
スライド式の扉を開けると、蓮美が身じろいでいる。起き上がろうとしているんだろう。俺は軽く駆け寄って体を戻させた。
「無理しなくていいから」
蓮美が申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「蓮美、一昨日運ばれたって聞いたから」
「………このとおり、重症。持病悪化したうえに肺炎。でも大丈夫」
「いや、俺には全然大丈夫には見えない」
こんな状態で大丈夫なんて言われても、さらに心配する。
「………そっか」
蓮美が笑顔になる。でも、力がない。
「そのうち治るから。だから、大丈夫」
「なら……蓮美を信じるよ」
俺は蓮美の頭をなでた。少し、蓮美が泣きそうになっている。ちょっと、もう出たほうがいいな。
「お見舞、ここ置いとくから。じゃ、また来る」
「うん」
軽く手を振り、病室を出た。
「……全然、大丈夫じゃない……役者として……頑張ってるときに…こんな……!」
やっぱりか。全然大丈夫じゃなかった。
いつも言ってるのにな。1人で抱えこむなって。
これは無理やりでも全部吐き出させてすっきりするべきか。俺は病室に戻って慰めたい気持ちを抑えて、そのまま病院を出たのだった。
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作者名:よなっち | 作成日時:2016年12月29日 8時