そういうことか ページ14
『恋って……これなのかな』
「え」
驚いた。妹がこんなことを思っていたとは。そもそも蓮美はいじめが原因で家族以外の男性が苦手になった。が、あるとき舞台を見て『舞台女優になりたい』と言い出した。
俺は妹を応援した。努力して、劇団ひまわり所属となり、無事に自分でやりたいことを出来るようになったと、俺にありがとう、と礼を言ったのを強く覚えている。
『恋なんて、しないのかと思ってた。でも、恋をした……』
なにかの小説の1文かと思った。
『彼との写真が多いのも、そのせいなのか』
俺は画像ファイルを開き、写真のところへ移動する。そこには、笑顔の妹と、顔立ちの整った男性が写っていた。この人が「流司」、なのだろう。
他にも、「流司」が蓮美の頬をぷにぷにしている写真、「流司」が何かのキャラクターの格好をして蓮美に目隠ししている写真など、「流司」との写真が圧倒的に多い。
『………げほっ、げほっ……!』
「蓮美!?」
『………りゅうじ?』
どうやら俺のことを「流司」と間違えているようだ。夢現の間にいるのだろう。
『りゅ……じのゆめ、みてたからやろか……げんじつ、でも……あえた……』
「……俺は……」
流司という男じゃないんだ。たった一言なのに言えない。
『りゅうじ、どうしたん……?いたいとこ、あるん……?』
「………っ……」
俺はそっと蓮美の額に触れた。とても熱い。
「……すまない」
俺はそっと、病室を出たのだった。
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作者名:よなっち | 作成日時:2016年12月29日 8時