皮肉に聞こえる願い ページ38
帰りのバスの中。
喋る者、眠っている者、お菓子を食べる者、無言で座る者。
皆それぞれの時間を過ごす中で、私は窓の外を眺めていた。流れる秋の紅葉が、カレンダーにでもなりそうな川の景色に飾られていた。
しかし、こうしていると遠足のバスを思い出す。小学生の頃が遠い記憶に感じてしまう私は、もしかしてもうおばさんに分類されるのだろうか。
遠足。
小学校の記憶はほとんどないが、遠足なら多少覚えている。とは言っても薄らぼんやりとした記憶で、6年生の時や3年生の時の記憶も混じってしまっている。明確に覚えてるのなんて、行った場所の名前だけだ。
バスの中、誰の隣りに座ったのか。よく覚えてない。けど、確か話した気がする。その子の目がすごく光っていたことはよく覚えているのに、その顔は思い出せない。
見えていた美しい秋の景色が急に遮られ、窓の外が真っ暗になる。トンネルに入ったということを、すぐに理解できないくらいには呆けていた。
童「…あの、チェリーさん。どうかしましたか?さっきから」
『ん?あぁ…ごめん、何でもないよ。最近物忘れが酷くてね』
よほど神妙な顔をしていたのか、さっきまで無言で横にいた童帝に話しかけられる。いつもの営業スマイルでそう言えば、後ろから「もうそんな歳か」と声が飛んできた。
『フラッシュ、降りたら覚悟してなよ』
フ「……」
どうしてこう小学生みたいな煽りしかできないのか。童帝の方がよっぽど大人っぽい。とりあえず降りたらグーパンする。
そういえば、童帝は小学生だった。小学校の遠足とか、どうなんだろう。
しかし、よくよく考えてみれば彼もS級ヒーローである。日常生活を犠牲にし続けているであろう彼に、そんなことを聞くのはよっぽどのアホかクソ野郎だろう。と口をつぐんだ。
バスがトンネルを抜ける。先程までの川は消え、次はイチョウや紅葉が山を覆っていた。
『……童帝』
童「ん?はい」
『見てごらん、綺麗だよ』
背中をシートに押し付けて、童帝に景色を見せてやる。言われたまま身を乗り出して景色を見た童帝は、目を輝かせてわぁ、と感嘆の声を上げた。
子供にとって大切な“学校”という要素を奪われた目の前の哀れな子供に、私みたいにはならないでくれよ、と願いを込めて。
今朝見た夢は、なんだったか。
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亜雄色(あおいろ) - ゆきなさん» 更新&返信遅れて大変申し訳ございません…!分かります!!私もその2人めっちゃ大好きです!!!(大声)ありがとうございます!やっぱりワンパン愛が足りないので滝行するしか無いですね (2020年11月3日 14時) (レス) id: e36e2a56bf (このIDを非表示/違反報告)
亜雄色(あおいろ) - おかめさん» その節は大変申し訳ございませんでした…!ありがとうございますぅ、全力で更新させていただきます…! (2020年11月3日 14時) (レス) id: e36e2a56bf (このIDを非表示/違反報告)
亜雄色(あおいろ) - ホロロさん» おもしロンドン…!?(溢れ出るセンス)ありがとうございますうううう!!更新&返信遅れまくってすみません…!ワンパン愛が足りませんね、滝行してきます (2020年11月3日 14時) (レス) id: e36e2a56bf (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 推しは番犬マンと金属バッドです!これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年9月11日 4時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
おかめ(プロフ) - 更新が暫く無いようですが、ずっと待ってます! (2020年5月29日 21時) (レス) id: 93e49bab53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜雄彩(あおいろ) | 作成日時:2020年2月16日 16時