タバコの匂い ページ34
あのあと少し遅めの露天風呂を堪能して、宴会場までもどった。
廊下からチラリと覗いたが既に室内の電気は消されており、酔い潰れた数人以外は部屋に戻ったようだった。
部屋に戻る前に自動販売機で紅茶を買う。出来れば自分で淹れて飲みたいのだが、生憎ここはホテルではなく旅館である。
最近の紅茶は自動販売機でも充分美味しいことが救いだった。
自分の部屋に戻ろうとした時、たまたま旅館の立派な日本庭園の隅っこにあるベンチに腰掛ける人影を見かけた。
『やぁ、まだ寝てなかったのかい』
ゾ「!チェリー…」
ベンチの中心に座っていた彼は、私に座るかどうか確認も取らず少し横に座り直した。こういうのを当然のようにできるあたり、良識のある一般人だ、と変なことを再確認するのである。
私も横に腰掛けると、彼は持っていたタバコを手で握り潰した。どうやら一服しているところを邪魔してしまったらしい。
『お邪魔したかな?すまないね…けど別に吸っててもよかったんだけれど』
ゾ「いや、副流煙には主流煙より害があるらしいからな」
『知ってるよ。それも込みで吸ってて良かったと言ったんだ』
そう言うも、彼はやっぱり吸おうとしなかった。気遣いすぎるのも困りものかもしれない。
『本当に遠慮しなくていいのに。私は結構好きだよ、タバコの匂い』
ゾ「……肺に悪いぞ」
『ふふ、どうだか。私は最強だからね』
なんだそれ、とゾンビも笑う。やっぱりゾンビといる時間は気楽でいい。お風呂上がりの熱った体に、涼しい秋の風が心地いい。
さっき買った紅茶を流し込めば、上品な香りが鼻を抜けていった。
月が綺麗。
そう言う素直な感想だが、別の意味合いを持っているのも承知している。今時の女子はロマンチックだとはしゃいでいるが、私からすれば織田信長は随分余計なことをしてくれたと思う。
どんなにロマンチックだろうと、その言葉に込められた本来の思いを共有しにくくなるなら意味がないのだ。
“性”の隔たりというのは、本当にいつでもどこでも邪魔である。
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亜雄色(あおいろ) - ゆきなさん» 更新&返信遅れて大変申し訳ございません…!分かります!!私もその2人めっちゃ大好きです!!!(大声)ありがとうございます!やっぱりワンパン愛が足りないので滝行するしか無いですね (2020年11月3日 14時) (レス) id: e36e2a56bf (このIDを非表示/違反報告)
亜雄色(あおいろ) - おかめさん» その節は大変申し訳ございませんでした…!ありがとうございますぅ、全力で更新させていただきます…! (2020年11月3日 14時) (レス) id: e36e2a56bf (このIDを非表示/違反報告)
亜雄色(あおいろ) - ホロロさん» おもしロンドン…!?(溢れ出るセンス)ありがとうございますうううう!!更新&返信遅れまくってすみません…!ワンパン愛が足りませんね、滝行してきます (2020年11月3日 14時) (レス) id: e36e2a56bf (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 推しは番犬マンと金属バッドです!これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年9月11日 4時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
おかめ(プロフ) - 更新が暫く無いようですが、ずっと待ってます! (2020年5月29日 21時) (レス) id: 93e49bab53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜雄彩(あおいろ) | 作成日時:2020年2月16日 16時