ワンパンならぬワンキック

番外編　束の間の休息 ページ32

『S級ヒーローともあろう大きな戦力を、一箇所に集めて呑気に宴会……この間に何処かが侵略されようものなら、ひとたまりも無いな。
どうせその辺の対策も何も考えていないんだろう？馬鹿の極みだね。“ゆるふわ”っていうワードをよく聞くとは思ったけど、まさか頭の話だったなんて』

ゾ「ハハ……まぁいいだろう、温泉旅行だぞ？高級旅館なんかなかなか来ないだろ」


だからその発想が呑気だって言ってるんだ。
そう言い返して味噌汁を啜る。あったかくて美味しい。周りのおっさんどもは早々に酒瓶を開けて楽しそうに騒いでいる。

未成年だっているんだから配慮してほしいが、せっかくの慰安旅行だ。子供の存在を気にしろというのも酷だろう。
しかし横で酒を飲まず、童帝に「楽しんでるか」と気遣いの言葉をかける奴もいるのだ。やはりこいつら一回殴ろうか。


金「アンタは酒飲まねーのかよ？」


日本食の素晴らしさに浸っていたら、不意に右横から声をかけられる。チャームポイントのリーゼントも学ランも無いので一瞬誰かと思ったが、すぐに思い至って返事をした。


『ああ………まぁ、未成年もいるしね。みっともない姿を晒す訳にはいかないし』

金「ふーん……」


そんな会話をしていたら、横からゾンビが口を挟む。「お前酒に潰れたことないだろ」なんて。失礼な。スピリタス瓶３本開けた時は流石に酔ったさ。


『それよりバット君、君飲んで無いだろうな。未成年飲酒は良くない』

金「飲まねーよ」


なんだかいつもより元気がない気がする。そう思ってチラリと見れば、心なしか眠そうだった。
そういえば彼、妹さんの生活リズムに合わせているから健康優良児だった。合わせて酒臭いおじさんにも絡まれて疲れたんだろう。

別に気を遣わなくていいのに。
私の隣じゃなくて部屋に避難すればよかったものを、と思うが、彼はまだ未成年だ。酒の席なんか分からなくて当然といえば当然だろう。

健康優良ヤンキー→←無くなった都市

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す