curtain call ページ29
「Aチャンの初主演舞台大成功を記念して〜…」
「「「「カンパーイ！！！」」」」
秋組と監督先生とAチャンで小規模のパーティーがMANKAIカンパニーで開かれた。
中庭でBBQをしてみんなと話しながら食べるといった、ラフな雰囲気で始まった。
主役であるAチャンは輪の中心で、対して俺っちは輪から外れて1人臣くんお手製の唐揚げやらポテトやらをつまんでいた。
なんとなく、Aチャンと話すのが気まずい…
公演の日からモヤモヤが止まらない。少し近寄り難い印象で、俺っちにだけ見せてくれた笑顔も、今は皆のものなんだと思うと…
嬉しい、はずなのに、
「太一」
思わず俯いて涙がこぼれそうになる。
「主役が抜けてきちゃダメじゃないッスか！俺っちのことは気にしなくていいんスよ、」
少し、毒のある言葉になったな、
「いや、なんか、兵頭さんと万里さんがドンパチ始めちゃって…」
Aチャンの指さす方を見ると、胸ぐらを掴み合って睨み合う2人がいた。
「そこから逃げてきたのもあるけど、私が太一と話したかったからさ」
「気遣いありがとうっス、でも本当に、もうAちゃんは皆のAチャンっスから、俺1人のことなんか、」
違う、こんな事言いたいわけじゃないのに、
「Aチャンはもう、皆のヒーローなんスから、」
なんて女々しいんだろう、こんな俺が、Aチャンを好きでいる資格もない、
「確かに、ラパンは皆のヒーローだと思う。でも、私ヒロインだってやりたい、」
Aチャンは静かに俺の手を握った。
急だったからビックリして顔を上げてしまった。
目の前のAチャンは首まで真っ赤になるほど赤面していた。
「そ、それに、私にとって太一は十分ヒーローだよ、太一がいないと私はいないし、ラパンだっていないし、結論で言えばラパンのヒーローも太一……あれ、なんか違うかも…」
しどろもどろになりながら言葉を必死に探すAチャンに思わず吹いてしまう。
「なんスかそれ…」
「やっぱ太一みたいにかっこいい事言えないわ、まだまだ半人前、」
「じゃあ、先生である俺っちから見本を見せてあげる！」
大きく深呼吸し、Aチャンの手を握り直す。手が震えてるのが伝わるかもしれない、でもこれも含めて俺の全力っス。
「Aチャンの事が好き。俺だけのヒロインになって。」
「もちろん…！」
Aチャンに満開の笑顔が咲いた。
end...
終わり
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作者名：宵ノ月 | 作成日時：2022年9月4日 1時
