俺だけのヒロインになって下さい。 (ページ3)

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cast.3 ページ3

「おはようッス〜...？」

機嫌を伺うように声をかけてみた。

二人の間に沈黙が流れる。

気まずいなぁ、と諦めかけたときに黒髪の間から視線が合った。

「きれ...い...」

言い終わったあとにハッとした。これが、"気づけば口から出ていた"ということか...

「じゃなくて、俺っち七尾太一っていうッス！隣の席同士よろしくッス！」

この空気感をなんとかしたくてバッと前に出した手。行き場を探している。

女の子はじっとその手を見つめる。

緊張で心拍数が上がり手汗が止まらない。こんな気分は初主演の舞台以来かもッス...

「私はA、よろしく七尾くん」

ウェルカムの返事が予想外でそっと差し出された手を強く握り返した。

「よろしくッスー！Aちゃん！」

後日話してみると案外ノリはいいし話は弾む。

授業中の真剣な顔や、物憂げに外に視線を向ける横顔の美しさには目が離せない。

それに気付いて「どうしたの？」と言うように首を傾げる仕草は、可愛いと心から思う。

Aの机に書かれたウサギの落書きに「かわいいッスね」と書くと「A画伯と呼んでもよくってよ？」なんて返事が返ってきて、2人で目を合わせて笑い合ってみたりして。

まるで恋人のようなやり取りだななんて、浮かれてる自分がいた。