最終選別編:弐噺_弐話目 ページ5
「自己紹介をしよう!」
そう突然明るい声で放たれる。
「私は雨辻樹!十六歳。気軽に樹って呼んで構わないし、敬語も使わなくて大丈夫!宜しくね!」
十六歳か…なら歳上だな。
でも本人が敬語を使わなくて良いと言うならそうしよう。
「俺は竈門炭治郎だ!十五歳、此方こそ宜しく!」
ちらりと樹の横を見る。
赤いちりめん模様の羽織と、黄色い帯が揺れていた。
歩く度に鈴の音が鳴り響く。
「ほら綾芽!自己紹介しなきゃ!」
「…生き残れる確証も無いのに?」
「そういう事言わなーい!早く!」
はぁ、と溜め息を一つ溢して此方を向いた。
澄んだ焦げ茶の瞳が俺を捉える。
「天花寺綾芽です、十五歳」
宜しくとは言わなかった。
でもそれがきっと普通だ。
彼女の言う通り、俺が生き残れる確証も無いし
彼女達が生き残れる確証も無い。
宜しく出来る時間は、どれ程のものなのか分からないんだ。
それでも俺は生き残らなくちゃいけない。
絶対に。
こんな場所で死ぬ訳にはいかないんだ。
…ん?十五歳?
俺と同い年なのか?
「ふっ…ふふ」
突如笑い声が聞こえた。
「それにしても…かっ…竈門ってwしかも炭治郎…っwwなっwふふッ」
「…樹、失礼」
「ごっwごめんね?w馬鹿にしてる訳じゃッwwないwwぐふっw」
天花寺さん?綾芽さん?綾芽?が冷めた目で樹を見ている。
それはもう…悲しいくらいに。
「いや、竈門炭治郎って凄い火に関係してそうな仕事してそうだなって」
「何で分かったんだ!?」
「ブフッ…w嘘でしょ!?www」
何で分かったんだ…!
名前で分かるのか!?…凄いなぁ…。
そうしている間にも樹はずっと笑っていて、綾芽の目はどんどん冷たくなっていく。
どうやら樹はそんな目はお構い無しみたいだが。
「ひぃっw待って超面白いんだけど竈門君w」
ゆらりと焦げ茶の瞳が俺に向けられた。
「…すみません、こういう人なのです」
「いや!大丈夫だ!」
するとさっきまで聞こえていた樹の笑い声が消えた。
すん…と一瞬で。
まるで居なくなったみたいだが、匂いや足音で居る事は間違いない。
「そんな事言ったら綾芽もでしょ?」
「…貴方よりかは変人じゃない」
…不味い雰囲気じゃないか?
仲が悪いのか?でも匂いは信頼の匂いがする。
それも他の者が崩す事すらも出来ない絶対的な信頼。
なのにどうしてなんだ?
変えなければ、この険悪な雰囲気を。
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作者名:櫻夢 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Ymamihaa131/
作成日時:2019年9月8日 4時