検索窓
今日:3 hit、昨日:8 hit、合計:1,707 hit

付き添い編:肆噺_拾漆話目 ページ21

あれからなんやかんやあって泊めてもらう事になった。
うーむ…九年間交流があったけれど、鱗滝さんの所に来るのは初めてだ!
何時もは家に来てもらってたもんなぁ…。


「久しいな」

「お久し振りです鱗滝さん!」

「…何年振りだ?」

「六年ですよ」


私の横で眠る綾芽の髪を掬った。
手を傾ければするりと重力に従って落ちていく。


「お前は鬼が憎いか?」


唐突な質問だった。

鬼が憎い…ね。

この質問は家族を殺されたあの日に訊かれた質問と同じだ。
だが、何年経とうが答えは変わらない。


「私の憎むべき相手は私自身ですよ、貴方はお分かりでしょうに」


そう、私の憎むべき相手は私だ。
弱くて惨めで愚かで無力な私。

鬼は確かに家族を殺した。
だがその鬼を自らの手で殺せなかった私が一番憎い。
そして、あの鬼の気紛れで生き残った私が、私の存在が憎くて仕方が無い。

罪とは何か、
それは私だ。


「…お前は変わったな」

「…はぁ…具体的に何処がでしょうか」


何処をどう見てそうなるんだ?
身体的成長を指しているなら分かるが、
彼はそうではなく、私の心理的な事を指しているのだろう。
だとしたら私は何一つ変わっていない筈だ。
変わってはいけない。


「そこの娘だ」


…綾芽の事?


「六、七年前のお前は、何も必要としていなかっただろう」


何も必要としていなかった…。
確かに、仲間も何も。


「そんなお前がこの娘を連れて行動している、彼奴が聞いたら喜ぶだろうな」


鱗滝さんの言う彼奴、というは私の祖父の事だ。
とは言えど、私が三歳の頃に死んでいる。
理由は病だ。


「…そうでしょうか」


私が三歳頃に死んだのだ、当然の事だが記憶は殆ど無い。
あるのは私を撫でる祖父の声と体温だけだ。
声は最初に記憶から抜け落ちていくらしい。
だが、私は視覚情報に頼れないから、あのしゃがれた低い声はずっと覚えている。


「お前は何故この娘を連れている」

「愚問ですよ鱗滝さん」


私が綾芽を連れている理由。
それは


「それは、彼女が私の瞳であり、私が彼女の声だからです」


最初、綾芽にとっては偶々利害が一致しただけの薄い関係だったのかもしれない。
でも私は違う。
彼女の声が、音が。
その己をも傷付ける程の優しさが、妹と重なった。
一声彼女の声を聴いた時、私は彼女を守らねばと、そう思ったんだ。

もう一度綾芽の髪を掬い上げる。


「彼女が居なくなれば、私は今度こそ死屍と成り果てるでしょう」

大正コソコソ噂話→←付き添い編:参噺_拾陸話目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:櫻夢 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Ymamihaa131/  
作成日時:2019年9月8日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。