最終選別編:拾参噺_拾参話目 ページ16
「「お帰りなさいませ、おめでとうございます。ご無事で何よりです」」
鈴を転がしたのような二つの声が発せられる。
七日前、最終選別の説明をしたあの二人だ。
因みに樹は二人がどのような人物なのか知っている。
「で?俺はこれからどうすりゃいい。刀は?」
隊服、階級、と説明される。
「刀は?」
綾芽は、刀刀、何をそう焦っているんだろうかと心の中で呟く。
白髪の少女が刀について説明をした。
「さらに今からは鎹鴉をつけさせていただきます」
パンパン、と二回手を叩いた。
すると飛んできた鴉が空を舞う。
黒色が一人を除く全員に留まった。
「え?鴉?これ。雀じゃね」
「ブフォッwww」
思わず吹き出した樹。
金髪の少年から怨みの籠った目線を向けられる。
すると、ギャアッと鴉の叫び声がした。
顔に大きな傷痕のある少年が二人にズカズカと歩み寄る。
少年は白髪の少女を力任せに殴る。
髪を掴もうとした次の瞬間。
視界がぐるりと回転する。
その視界の端には、照らされた夜色の髪が揺れていた。
背中に叩き付けられる衝撃。
音も無く近付いた樹の足払いをされ、呆気なく地面に倒されたのだ。
「君さあ…どんな立場でこの方を殴ってる訳?君ごときが触れて良い方ではないんだよ」
「グッ…うるせぇ!」
樹が少年に顔を近付ける。
「次、何か仕出かそうとしたらその首折るからね?」
「っ…やってみろよ!テメェみてえなひょろっちい女が出来んのか?」
煽るような口調で樹に言い返す少年。
樹は勢いよく少年の首を掴み、ギチギチと音を立て絞め上げていく。
「はは___出来るから言ってるんだよ」
愉快そうに細められた蒼天の瞳と、歪められた口唇が少年の目にはっきりと映った。
「大丈夫ですか?」
綾芽は白髪の少女に近付き、
口唇から流れる血液を拭い、殴られた箇所を診る。
どうやら側頭部辺りのようだが、殴られた本人は特に痛がる様子も無いので
「脳震盪が起こるかもしれませんから、あまり動かず安静になさってください」と伝えた。
少女は礼の返事を律儀にも返した。
「お話は済みましたか?」
黙っていた黒髪の少年が言葉を発する。
「ではあちらから刀を造る鋼を選んでくださいませ」
___鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は御自身で選ぶのです。
遂に動き出した運命の歯車。
待ち受けるのは希望か、はたまた絶望か。
これは、日本一慈しい鬼退治の物語。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:櫻夢 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Ymamihaa131/
作成日時:2019年9月8日 4時