130日目 今も ページ4
・ノーマンside
「どうして解ってくれないんだよ……僕はそんなことこれっぽっちも望んでいないのに」
足が上手く治らなくなったらどうする?
逃げられないだろ。
装置(コレ)だって僕がせっかく使わなかったのに…!
僕だって好きで出荷されるわけじゃないんだよ。
でも皆をまもりたい、これしかないんだ。
「ただ笑って見送ってほしい……僕の気持ちを汲んで」
静寂、沈黙…氷のように固まった空間。
「イヤ。死にに行く決意(その気持ち)だけは尊重できない。「本当は嫌」なら尚更だ!」
そんな時聞こえてくるのは、いつだって彼女の声。
どんな氷も溶かしてしまう、エマの声。
__「生きたい」
ほらこれだ。無茶で無謀で、甘くて幼稚で
けど、まばゆいくらいに真っすぐで。
一生懸命考えたんだろうな……てんで滅茶苦茶だけど。
__「どうやったら逃げられる?」
__「逃げてくれる?逃げるしかなくなる?」
でもエマはわかっていない。
その気持ち、その思いだけでどれだけ僕が幸せだったか。
だから僕は辛くても、怖くても、笑顔でいられた。
今も笑って逝けるんだ。
「え」
「時間よ、ノーマン」
けれど、いくら太陽でも、もっと広く見れば一つのちっぽけな存在でしかなくて。
「うん」
「待って」
「エマ、少し落ち着きなさい。寂しいのはわかるけれど、お転婆がすぎるわ」
そして少女にだけ聞こえるように、言うのだ。
「次騒ぎ立てたら殺すわよ。ムダなのよ、あなたは何もできなかったの」
__諦めなさい
彼女がずっと見て見ぬフリをしてきた選択肢。
イザベラの言葉は呪いのように重く伸し掛った。
「じゃあエマとレイ、Aのこと頼んだよ」
きっとこれまでで一番難しい頼み事。
ドンとギルダを信じて。
廊下の方に振り返れば、医務室にいたはずの愛想の欠片も感じられない人相のレイと、そんな彼を横目で見てから困り顔でこちらを向くA。
胸の辺りでAが小さく手を振るのに、優しく微笑んで振り返す。
人の行動に敏感な彼女は、誰より早く彼に気づき、寄り添ったのだろう。
じゃじゃ馬なエマを止めるのは、騎手であるレイ、そして二人を上手に繋ぐのは馬具であるA。四六時中厩務員が一頭の馬に付いていることはできない。
◆ ・ ◆ ・ ◆ ・ ◆ ・◆
水月のつぶやき。
相応しい意味の漢字を使っているので、引っ掛かる所もあったかと思いますが誤変換ではありません!
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作者名:水月 | 作成日時:2019年7月13日 23時