147日目 残す ページ22
・レイ/イザベラside
暫く走れば、目の前に姿を現す高い塀。
ただ、不思議とノーマンが背中を押してくれている気がして、一拍置いてエマが指示を出す。
「私とドンでまず上る、その後皆を引き上げる」
「おう。みんな！訓練通りやりゃ大丈夫だ！」
「全員無事に逃げきるよ」
・
・
「……全て燃えた……まんまとハメられた…」
燃え上がるハウスを前に、右手にある先程拾ったエマの発信器(左耳)に目をやる。
「フ……フフフ…」
まだ生きてる！！
エマもレイもAもまだ生きている！！
ああ良かった！！良かった良かった！！！
生きてさえいれば捕まえられる、生きてさえいれば！！
念の為ハウスをサッと確認する。
本当に全員連れて逃げたのね…エマ。
でも必ず捕える、全員(皆)捕まえる、私の可愛い子供達。誰一人逃がさないわ。
持ち出した本部への連絡用無線機を置き、いざ後を追おうとしたが、それは出来なかった。
「ママ」
クイッとスカートを引っ張られ、自分のことを呼ぶその声。
え……
「フィル？」
・
・
え……あれ？
半分以上が上った辺りで口に出す。
「4歳以下がいない…？まさか……」
「考えたの……前にレイに言われたことももう一度……」
＿＿「連れて出りゃ全滅は見えてる」
「連れていかない」
「え？」
それに答えたのはエマではなかった。
『4歳以下は農園(ここ)に残す』
「あ、A」
『下はもういないよ』
「わかった、ありがとう」
『いーえー』
数十秒のやりとりをしている間に全員が塀を上がり終え、ラストのAがそのまま続けた。
『そうだった。でもね、諦めたわけじゃないよ。今は連れていかないだけ』
「……「今は」？」
些細なことも見逃さないのは流石フルスコア。
レイは勿論聞き返す。
・
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作者名：水月 | 作成日時：2019年7月13日 23時
