137日目 火 ページ12
・Noside
大人しく椅子に腰掛けるエマ。
「いいか。塀の先が崖だった、崖からは降りられない。逃げるなら「橋」から。
でもその「橋」は一つだけ、しかも本部から出ている。これが今 俺達が置かれた状況だ。
で、問題は2つ。�．泪泙量椶鉢�橋の警備」
間髪入れずにエマが言う。
「�．泪泙量椶婆簑蠅覆里蓮峪簔�への監視」と「常に弟妹(誰か)を抱えていること」＿＿でしょ？
昼間もそうだし、ママは夜も赤ちゃんと同じ部屋」
「そう。だからまず逃げる時にはママの監視をふりきって逃げなきゃならねぇし、ママとチビ達を切り離さねぇ限り全員での脱走は難しい」
覚悟の上だが、やはり簡単なことでは無い。
「次に��橋の警備。唯一の道だ。元から見張りは置いているだろうし、脱走騒ぎが起きりゃ必ず警備が殺到する。
そうでなくとも本部の先だ。近くにあの化物がウジャウジャいる。
つまり、ママに止められたら終わり。本部へ脱走の通報をされたら終わり。橋で見つかったら終わり。まあ普通諦めるしかねぇ、“不可能(ムリ)”だ」
レイの主張は的確で、思っていた以上の何倍も上回る正確な見解。
「さぁどうする？」
そこまで言われ黙ってしまったエマは、続きを待つしかなかった。
「俺はこれが一番だと思う」
先程からテーブルに置かれていた箱。
中にはオイルが入っていると思われる缶がびっしりと詰め込まれている。
「夜 ハウスに火をつける」
「火事を起こすってこと？」
「そうだ」
「ママが消化に手を取られている隙に「避難」って形で全員を連れ出す。
それでその際地下室へ続く扉の鍵穴に粘土でも何でも詰めちまえ、ママはそれで通報できない。
それで本部にはあくまで「火事」と思わせる。「脱走」じゃなく。
そうすれば警備は「橋」へ向かない、少なくともしばらくは。そして夜なら姿も隠しやすい。逃げるなら夜だ」
加えて、これだけ言っておいて終わりなはずがなかった。
「あとオマケでもう一つ用意した。火炎瓶10本。森の中“死角になる岩”の陰に隠してある」
「火っ炎瓶！！？」
「6年ごしの準備ナメるなよ」
おうよ、と返す彼の目は真剣そのもの。
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作者名：水月 | 作成日時：2019年7月13日 23時
