136日目 上出来 ページ11
・Noside
「ああ。お互い結局考えることは同じ」
不安定さを残しながらも、二人が纏う雰囲気は大分柔らかくなった。
「諦めたフリをして、脱獄を進めてたってわけだ」
それはこの場にいないAにも当て嵌る。
「逃げようレイ。その話をしにここへ来た」
「丁度よかった、俺も話がしたかったんだ。2か月ママの目気にしてロクに会話もできなかったもんな」
多少の短い挨拶はしても、常に回数や表情、あちこちに注意を怠らなかった。
「うん。私もとにかくママに本当の狙いを気づかれたくなかったから」
「「本当の狙い」?」
「そう」
双方、それぞれの進捗状況や詳細を省いても、共有せねばならないとこは山積みだ。
「ママは手強い。私達は常に見張られていた。決して警戒を緩めない。
私もレイもあれだけ何もしていなかったのに、ママは監視をやめてくれなかった。本当に用心深い」
それがこの二月(ふたつき)で感じたことだった。
「でも、それならそれを利用すればいい。
私に目を向けさせれば、私以外から目を逸らすことができるから」
「ドンとギルダか」
「ママの警備が固くても、その目は2つと限られている。私達に警戒が向けば向くほど、他は手薄にならざるを得ない。
何かするのは全部任せた。訓練を始め、諸々の準備。どうしてもってところだけはAに動いてもらったけど」
「それで?どこまで進んだ?」
「道具や食料、防寒具の用意。全部済んでる、いつでも出られる」
「上出来じゃないか」
険しそうにしていたレイに、ぱっと笑顔が覗く。
「あとは方法、どう逃げるのか」
「出る策も練った、考えがある。明日の昼ここから逃げよう」
ただ、いくら策が用意されていようと二つ返事で承諾しないのがレイ。
「待て、昼に出るのか」
勿論そこには理由が伴っている。
「無茶だろ、以前(前)と状況が違う。俺は出るなら夜だと思う。まあ聞け、座りなよ」
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作者名:水月 | 作成日時:2019年7月13日 23時