9(弓side) ページ9
「……そうか。あそこにチタウリがいたもんな」
少女は数度頷く。それから口を開いて、俺に向けて理解をしてくれたことを感謝するように口をぱくぱくと動かしたのだが、――その時気づいたのだ。
口を開いた少女の口内に、誰でも持っているはずの舌がないことに。
「おっと、…お前………」
思わず眉間に皺を寄せてしまったらしい。様子に気づいたキャップが声をかけてきた。
「クリント、どうしたんだ？」
「こいつ舌がないな」
「どういうことだ」
「切られたんでしょうね、―――誰かに。」
「一体なんのために？」
「さぁ、でも喋られるとまずいことがあったんじゃないかしら」
「……この子を一人にさせるべきではない、ということか」
そういってキャップは眉間に皺を寄せて静かに呟いた。
まぁ、分かり切ったことだ。子供が悪の手に染まらぬよう努めるのは大人の仕事で、
それが特別なものであれば俺たちが関与をしなければならないってことも。
「ほら、嬢ちゃん散々動いて疲れたろ。背負ってやる。」
キャップが結論を出す前に提案を持ちかけると少女は周りの大人たちを見つめ、そして俺の瞳を見つめてはどこか申し訳なさそうな様子で、一度だけ頷いた。その頷きを了承とみなして手を離すと、やはり少女は逃げるそぶりを見せなかった。わざわざがら空きの背中を得体のしれないものに見せるなんて普通はNGなんだろうけどな。そんなことを思いながら少女に向けて背を向けると、少女は恐る恐るといった様子で俺の背中に身を寄せては痩せた腕を俺の首へと伸ばしたので、俺は後ろで手を組んでひょいとその体を持ちあげた。
急に立ちあがったこともあって少女は驚いた様子ではあったが、ぎゅっと首に回した腕に少しだけ力を加えるだけで後ろから攻撃が行われる様子も敵意も警戒の色も見えない。少しは信頼度が上がったってことだろうか。とはいえ、いくら俺が鍛えているといって少女の体の軽さには――少女の見えないところで眉間に深いしわが刻まれるのはご愛嬌としたいものだ。
その後、俺たちは基地へと向かい少女受け入れにむけて緊急会議を行うことになったのだが、
到着する頃には少女が眠りに落ちていて、そのまま数日ほど目を覚まさなかったのはこれから少しあとの話だ。
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---(プロフ) - candyさん» candey様初めまして。コメントありがとうございます。お褒め頂けるのはやはり嬉しいですね、マーベル初心者ということもあり設定などがオリジナル感強めですが、ぜひ楽しんでいただけますと幸いです。 (2021年1月23日 0時) (
レス) id: 72a7a46fdc (このIDを非表示/違反報告)
candy(プロフ) - 初めまして！最近アベンジャーズの新しい小説がなかったので書いて頂けてとっても嬉しいです。読みやすくてすらすら読めてしまうのに作品の世界観に引き込まれて更新されるのが毎日の楽しみになっています！とはいえ無理はなさらず更新頑張ってください！ (2021年1月22日 0時) (レス) id: c8c684909c (このIDを非表示/違反報告)
---(プロフ) - vannyさん» 初めまして。無計画に始めたものですが、vanny様から素敵な感想を頂き本当に嬉しく思います。誰落ちにするか等全く決まってないのですが、ご期待に添えるよう頑張りたいと思います…！ (2021年1月20日 22時) (レス) id: 72a7a46fdc (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - 初めまして！文章構成がとても綺麗で尊敬します……！お話もこの先の展開が気になって仕方ありません！毎日更新楽しみに待ってます。頑張ってください！長文失礼致しました。 (2021年1月19日 15時) (レス) id: db198bbf02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：--- | 作成日時：2021年1月4日 23時
