25(鉄side) ページ25
げほげほと咳ごみながら肩を小刻みに震わせる姿なんて気の毒に思えるほど――だが、ソーの怒りは同情なんかじゃ済まないようで、ソーは少女を見下ろすと静かに呟いた。
「ユグドラシルーーいや、少女よ、私はオーディンの息子、マイティ・ソーだ。」
威圧にも殺気にも取れるソーの言葉は地を這うように低い。
何がそこまでソーを動かすのかと疑問を抱くも、肝心の少女はソーの口からオーディンという言葉を聞いて何か気付くようなことがあったのだろう。眸が揺れ、動揺を示す。
「オーディン、様、の……?」
しかし私たちにはさっぱりわけの分からない話だ。
何故怒っているのか。
何故少女は動揺しているのか。
全てが謎だ。だがこれ以上ソーも少女も放っておくことは出来ない。
「ソー、お前らしくないな。一体何なんだ?」
私が問いかけるとソーは眉間に皺を寄せたままであったが、その場でゆっくりと深呼吸を数度繰り返してからぽつり、ぽつりと語り始める
「ユグドラシルとはオーディンの馬と呼ばれているもので、いわば私の父の配下にあたる神なのだ」
「……しかし、父いわく三千年前に世界樹は枯れ、世界樹がいた惑星も何者かの手によって滅亡されたと聞いていたが、どうして地球に世界樹の主であるお前が……」
「わ、わたしは……」
少女は何かを言いかけたが、震えは止まっていない。
「ソー、彼女は目覚めたばかりだ。」
「怯えさせないで」
「……すまん、少し熱くなってしまった」
そこで見かねたキャップとナターシャが口を挟み、とくにナターシャが殺すぞといわんばかりの視線を向けると、ソーは小さくだが謝罪を述べる。ピーターが少女の傍に近寄って震えの止まらない少女を心配そうに見つめるが、少女は肩を震わせたままで、震えの止まらない彼女に追及しても話はうまく進まないと判断したキャップは膝を折りしゃがむと少女としっかりと目を合わせた。
「…ユグドラシル、今は少しでも休んでほしい。それから少しずつでいいから話を聞かせてもらえるだろうか?」
少女は控えめに頷くも、視線をキャップから外してソーへと向けると小さく、かき消されそうなほど小さな声で
「………ご、めんなさい」
と呟く。
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---(プロフ) - candyさん» candey様初めまして。コメントありがとうございます。お褒め頂けるのはやはり嬉しいですね、マーベル初心者ということもあり設定などがオリジナル感強めですが、ぜひ楽しんでいただけますと幸いです。 (2021年1月23日 0時) (レス) id: 72a7a46fdc (このIDを非表示/違反報告)
candy(プロフ) - 初めまして!最近アベンジャーズの新しい小説がなかったので書いて頂けてとっても嬉しいです。読みやすくてすらすら読めてしまうのに作品の世界観に引き込まれて更新されるのが毎日の楽しみになっています!とはいえ無理はなさらず更新頑張ってください! (2021年1月22日 0時) (レス) id: c8c684909c (このIDを非表示/違反報告)
---(プロフ) - vannyさん» 初めまして。無計画に始めたものですが、vanny様から素敵な感想を頂き本当に嬉しく思います。誰落ちにするか等全く決まってないのですが、ご期待に添えるよう頑張りたいと思います…! (2021年1月20日 22時) (レス) id: 72a7a46fdc (このIDを非表示/違反報告)
vanny(プロフ) - 初めまして!文章構成がとても綺麗で尊敬します……!お話もこの先の展開が気になって仕方ありません!毎日更新楽しみに待ってます。頑張ってください!長文失礼致しました。 (2021年1月19日 15時) (レス) id: db198bbf02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:--- | 作成日時:2021年1月4日 23時