あめふり 2 ページ28
しとしとと穏やかな雨が降る中、傘を差して娘と手を繋いでマフィアの本拠地のビルを目指して歩く。
「まま、たのしーね!」
可愛らしいコートに身を包んだ愛娘が、そう云って笑う姿に思わず笑みが零れる。
「うん。ママも、治春ちゃんと一緒にお散歩できて、とっても楽しいよ」
自宅であるマンションから本拠地のビル迄歩いて約20分、その道を二人で手を繋いで歩いて行く。
途中で治春がかたつむりや葉の裏で休む蝶々を見つけたり、ちょうど咲いたばかりの色とりどりの紫陽花に目を見張ったり、何時もよりゆっくりしたペースで歩く内に、目的地のビルの前に着いた。
時間的にも、丁度彼が出てくる頃だろう。
「お、誰かと思ったら、Aに治春じゃねぇか。今日はどうしたんだ?」
暫く彼を待っていると、ポートマフィア幹部、中原中也が声をかけてきた。
Aは昔、彼の直轄で働いていたため彼には夫である龍之介共々、大分世話になったのだ。
「ええ、今日は龍之介の仕事が早く終わるので、治春の散歩がてら彼の迎えに来たんです」
Aがそう微笑むと、中原は
「そうか、芥川はもうすぐ来ると思うぜ。6月とはいえ寒いこともあるから気ィ付けろよ」
と、ニッと笑うと、ぽんぽん、と治春の頭を優しく撫でて去って行った。
「A、治春」
ふと、聞き慣れた声に振り返ると、何時もの黒外套に身を包んだ最愛の夫、龍之介がいた。
「…迎えに来たのか」
「うん。それに、治春ちゃんもお散歩したいって云ってたから」
「…そうか」
芥川は、愛しい妻と愛娘の前でしか見せない様な、驚く程穏やかな表情でふっと笑った。
「…帰るぞ、A、治春。僕達の、家に」
芥川がAから手渡された傘を差して治春の右手を、そしてAがその左手を繋ぐ。
「うん、かえりゅー!」
大好きな両親に手を繋いでもらい、治春も嬉しそうに笑う。
「うん、早く帰ろっか。」
三人で手を繋いで、穏やかな雨の中を我が家を目指して歩き始めた。
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余談ですが、『人間の声が一番綺麗に聞こえるのは雨天時の傘の中』という話があるみたいです。
人間の声(音波)が雨粒に反射し傘の中で共鳴するため 特に雨量がやや多く囁くような声の時が最も美しく聞こえるのだとか。
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チエリ(プロフ) - リクエストです。娘ちゃんの七五三が見たいです! (2020年12月2日 16時) (レス) id: 26773a3f05 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - リクエストしてもいいですか子供ちゃんが芥川君にいやと言って太宰さんに懐いたらお願いします (2020年11月28日 14時) (レス) id: c1f033818d (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 更新楽しみです! リクエストで 夢主が長期任務に行ったらでお願いします 医療なのであまり無いと思いますがお願いします! (2020年6月3日 22時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 森さんとエリスとの触れ合いが読みたいです。 森さんにお茶を運ぶちーちゃんとかエリスとおままごとするちーちゃんとか… 中也の帽子を被って真似っこするちーちゃんとか。 (2020年4月15日 20時) (携帯から) (レス) id: 66cf0ac4ec (このIDを非表示/違反報告)
水無月カエデ(プロフ) - リクエストよろしいですか?治春ちゃんが風邪ひいて、主人公と芥川が看病するお話はどうでしょうか? (2019年8月12日 8時) (レス) id: 6738e6e757 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:独楽:ころん | 作成日時:2018年8月12日 20時