漆黒の禍狗はパパになったようです

おるすばん ページ12

〜1歳3ヶ月〜
芥川side
「龍、治春ちゃん、それじゃあ行ってくるね！」

「嗚呼、楽しんで来い」

僕はそう云って、玄関先でAを見送った。

治春が生まれてから１年と少しが経った。

最近はとたとたと歩き回れる様になり、行動範囲もかなり広がった為か、毎日治春の世話をしているAも我が子の成長を喜びながらも一層疲れが増している。

その為、今日は僕が治春の面倒を見る為、Aは今日一日銀と買い物に行くことを提案したのだ。

「ぱーぱ！」

不意に、くいっと服を引っ張られる感触がした。足下を見ると、愛娘がにこにこと此方を見つめていた。

「どうした？遊んで欲しいのか？」

「やーう！あ！」

僕がそう云って治春を抱き上げると、治春はぺちっと僕の額を叩き、再び何やら訴え始める。

「あー！ぶーぶ！」

「？？」

しかし、普段仕事であまり構ってやれ無い為、治春の訴え様とする事が理解出来無い。

「…おやつ、か？」

台所に行き、治春の好物のベビーカステラを出し、治春に渡す。

「や！ない！」

しかし、ぺしんっと跳ねのけられた。違うらしい。

「…玩具だろうか」

次に、玩具箱から治春の一番のお気に入りの黒獣のぬいぐるみを取り出し、治春に渡す。

「やっ！ないの！」

だが、玩具でも無いらしい。再び、跳ねのけらた。

「や！ちーないの！やー！」

その内、自身の要求が通らない事に腹を立て、治春が腕の中でじたばたと暴れ、泣き出した。自分が持てる最大限の言葉を総動員し、抗議している。

「ないの！ちーなの！」

「…」

僕はどうしたら良いのか解らず、唯、じたばたと僕の腕の中で暴れる治春を抱き、その辺りを歩き回る事しか出来なかった。

其の後、30分程すると泣き疲れたのか、治春は眠ってしまっていた。

「…寝顔だけは生まれた頃から変わらぬな。」

僕は苦笑すると、治春をソファの上に寝かせた。その横に座り、我が子の寝顔を見る内に僕も少しずつ眠気に襲われ、その壗瞼を閉じた。

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「ただいまー！…あれ？」

居間に入ると、ソファの上で仲良く眠る大好きな二人。

そのそっくりな寝顔に思わず笑みが零れた。

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