優等生くんの裏の顔【knmc】

44:突然のお説教モード ページ44

重たい瞼の中。
微かな足音と浮遊感だけが感じ取れる。

全っ然、瞼開かないんだけど…。

寝起きはいいはずの私。
言うことを聞かない体に驚いた。




そっと柔らかいところに寝かされる感覚。

ん…、どこ…？




遠ざかる足音を聞きながら身じろぐ。
うっすらと目を開けると、見慣れない天井。

少し見回すと、刀也君の家だった。




なるほど。帰ってきたのか。
ふにゃふにゃの頭でそれだけを理解した。

離れたところで何かを片付けている刀也君。
クローゼットの前にしゃがんでいる。


＿＿＿ あ…。



そこは私が隠れていたクローゼット。
踏み荒らされていたのを思い出した。




原因が何もせずに見ているだけとは、いかがなものか。
だるい体に鞭を打って起き上がる。

立ち上がろうとすると立ちくらみがした。
少し休んでから立ち、刀也君へ近付く。




「…とうやくん」


「わ、びっくりした。起きたの？」




背後から声をかけると、肩を跳ねさせた。
驚いてる姿もかわいい。


「無理しないで。寝てても大丈夫だよ」


刀也君なりの気遣い。
有難いけど、首を振った。


「やだ。いる」


言い方が妙に子供っぽくなった。
発熱時の特有のあれか。
あの、なんか知能が退行するやつ。

そんな事を考えながら刀也君の近くに腰を下ろした。




「んふ、寂しくなったの？」




揶揄うような口調。
刀也君を見上げるとニヤニヤしている。

ふん。確信犯め。

働かない脳では言い訳も思い付かない。
第一、刀也君の口に勝てる訳がない。




「うん。近くがいい」




諦めて素直に頷いた。
すると、視界の端で刀也君の動きが止まる。

再び見上げると口に手をあてて顔を逸らしていた。

え、なんだ。どうした。




「刀也君、？」


「…いや、なんと言いますか、その」




怪訝な顔を向けると焦ったように言い訳を始める。
珍しい。必死だ。




「あなたは今の状況をちゃんと理解してください」




…あれ、私お説教されてる？
さっきまで悶えていた彼の口からはお説教。
なぜだ。




「異性の家で2人きり。
　あなたは発熱でまともな判断もできない。

　ましてや、俺はあなたの事を＿＿＿」




そこまで言って刀也君は言葉を止めた。

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