優等生くんの裏の顔【knmc】

42:もう、ダメ ページ42

薄暗い歩道。
立ち止まった彼。
隠された手から見えるのは色づいた綺麗な顔。


瞬間、強く引かれた腕。






＿＿＿ 彼の匂いと温度に包まれた。






「と、うや君」


驚き、全身に力が入る。
彼の腕の中で固まった。

その腕は慰めの時のような優しさはない。
強く、強く抱きしめられる。



「…Aが、全部悪いから。反省して」



首元に埋められた刀也君の顔。
耳元で声が低く響いて鼓膜を震わした。

くす、ぐったい。


サラサラの髪の毛も相まって、身じろぎする。



「刀也君が女の子に失礼なこと言うからだよ」


「…も、うるさい。ちょっと黙って」




気恥ずかしくてたまらない。
いつものテンションに戻ろうとしても許してくれない。


ドキ、ドキ


心臓がうるさい。




「な、んで…。ゆるして、ください」




目の前の胸板にグリグリと頭を押し付けたが、離れない。

もう、もう、もう！




刀也君の着ている服の裾を引っ張った。
緊張で手も震える。
ちゃんと引っ張れていたのかすら わからない。





今日の私は感情起伏がジェットコースター。
自分自身がついていけない。

プシュー…と謎の幻聴が聞こえてきた。


やば、い。



異性にここまで接近したのなんて初めてだった。
全身がありえないくらい熱を持っている。

…あつい、あつすぎる。



心なしか頭痛やめまいもしてきた。
一定の羞恥を超えると、人間ってこうなるのか。



「…と、やくん。もう、だめ」


意味がわからないほどボーッとする頭で刀也君に呼びかける。
けれど刀也君は離れてくれない。








「……A、？」



何かを感じ取ったのか、肩を支えて離してくれた。
＿ 否。刀也君にぐったりともたれ掛かって動かない私を支えてくれた。




刀也君が控えめに私の額に触れる。


「あっつ…、熱か」


そう言われると、そうかもしれない。
自覚した途端 体がだるくなってくる。

あー、むり。

重たすぎる瞼に働かない頭。
欲望のままに目を閉じてしまおうか。


フラつく体を刀也君に預ける。
支えがないと立っていられない。




「ごめ、立てない」


離れたはずの体は再び密着。
そばに居る刀也君に擦り寄る。


「ちょっとごめん。よっ、と」


背中と膝裏に手を差し込まれる感覚。
直後、足が地面から離れた。

ふわふわと心地良い浮遊感に包まれた。



｢楽にしてていいよ。大丈夫だから｣



刀也君が優しく囁いてくれる。
下がってくる瞼に抗えず、私は意識を失った。

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