優等生くんの裏の顔【knmc】

40:なんちゃって同棲生活 ページ40

刀也君の隣に並び、帰路につく。
愛しの我が家ではなく刀也君の家の。



「大丈夫？」


「んー？」



もう体は痛くない。
ちょっと疲れたけどね。



「もう痛くない！でも疲れた！」



両手を曲げてマッスルポーズのようなものをとって見せた。
刀也君は苦笑する。

あ、そうじゃないって顔だ。




「…平気だよ。ほんとに」




刀也君の瞳を見つめ、微笑む。
心配してくれてありがとう。刀也君。




「うちの家族がおかしいのは、元々知ってた。

　…いつか壊れるとは思ってたからさ」




壊れてもいいと思ってたし、今も思っている。
まぁ、ちょっぴり哀しかったけどね。


家族がいなきゃ生きていけないなんて事はない。
実際、高校に入ってからはほぼ家庭内別居。

自分のことは全て自分で行い、住む場所以外は自分の力で生きていた。





「いつそうなっても困らないよう、準備してた」





休日はアルバイトをして、給料は全て貯めている。
いつでも一人で生きていけるように。




「…そっか」


「うん、ありがとう」




重たくなった空気感に耐えられなくなり、大きめの声を出した。



「あー！楽しみだなぁー！！」



シリアスな空気は好きじゃない。
落ち込む事より楽しむ事に時間を使いたい。

時は金なり。
時間は有限だ。


「…なにが？」


刀也君は私を怪訝そうな顔で見る。
失礼なやつだ。




「……刀也君との同棲生活？」




仕返しにぶっ込む。
普段の私なら絶対に言えない。
なぜなら、こう見えてシャイガールだから。


…まって、諸刃の剣すぎた。自爆した。





「言い出しっぺが照れないでくれる？恥ずいんだけど」





「……………別に照れてません」


「その間が物語ってるからね？」





刀也君もほんのり色づいた頬で睨みつけてきている。
うわ、顔がいい。









「私、刀也君のこと嫌いじゃないよ」









こうなったらあれだ。開き直りだ。


いつの間にか、私の苦手な重い空気は消え去っていた。

41:破壊力→←39:幕引き

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す