優等生くんの裏の顔【knmc】

3:必殺、言い逃げ ページ3

「っ、はぁぁぁああ〜………」




今日イチのため息。
肺の中にあったものを全て吐き出した。

…死ぬかと思った。

大袈裟に聞こえるかもしれないが本当だった。
今も心臓が暴れている。



さぁ、愛しの我が家へ帰ろう。



重い足を引きずりながら高架下を進む。
壁にもたれかかって動かない男性の前は早足で通った。

ふぅ、と息を吐きながら高架下の出口である坂を登る。









「みーつけた」








息が止まった。
勢いよく声の方を振り向く。


＿＿＿ 剣持君だ。


…なるほど、最初から気付かれていたのか。



「…こんばんは、杉本さん」


「こんばんは、剣持君。奇遇だね」



剣持君は制服を着崩し、電柱に寄りかかっていた。

出待ちだなんてタチが悪い。
君は出待ちされる側だろう。



「で、さっきの見てたでしょ？」



…単刀直入すぎる。
聞き方も確信のある聞き方だ。

とぼけるのは無理があるだろう。

YESと答えてもNOと答えても無事ではいられない気がする。
本能ってやつか。




「学校で居眠りして帰るの遅くなるなんて最悪だよね〜」




必殺、『答えない』！！
いつも通りのテンションでいこう。
学校での私はアホキャラだ。


「ん？話聞いてます？」


「聞いてる聞いてる。あれ、剣持君。着崩してるのもカッコいいね」


「聞いてねぇな！」


お、ナイスツッコミだ。
不思議な事に一対一だと怖くない。
いつもの学校での剣持君みたいだからかな。


「お腹すいたね〜、帰ったらとりあえず寝ようかな」


「お腹空いてるならご飯食べろよ」


「あはは、剣持君キレキレだね〜」


いけそうだ。なんでだ。いけちゃいそうだ。


「愛しの我が家が待っている！じゃあね！剣持君！」


ナチュラルに別れを告げ、歩き始めた。
そして歩みを早める。


…ん？


背後を振り返ると剣持君もついてきていた。


なんで！！なんでついてくんの！！




「…どうしたの、剣持君」


スピードを緩め、歩きながら尋ねれば横に並ばれた。


「僕の質問にも答えませんし、一人で夜道を歩くのは危険かな、と」


……これはあれだ、負けだ。
白旗を上げるしかない。




「私の負けだね、逃げきれなかった」





「でも、今は君の質問には答えない！！
　なぜなら！お腹が空いているから！！さらば！！！」




盛大なる言い逃げをぶちかまして点滅する青信号を駆け抜けた。
交通量の多い道だ。信号無視は死につながる。

愛しの我が家はもうすぐだ。

4:ギターって、高くない？→←2:しまった

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