優等生くんの裏の顔【knmc】

38:新たな夜明け ページ38

剣持side




不意に黙った俺を見て、皆がなんとなく気付き始めていた。
静かにしていたでろーんさんに視線を向ける。

彼女はコクリ、と頷いて口を開いた。




「私たちの正義は、果たされた。終わっちまった。

　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ お前ら。今までありがとな」



実に彼女らしい。
シンプルで、でも心に響く言葉選び。

でろーんさんは久遠さんに視線を移す。
受け取った久遠さんは目を伏せた。



「…僕は、楽しかった。皆と出会えて、よかった」



率直な思いを飾る事なく紡がれる。
これもまた、彼女らしさ溢れる言葉。

久遠さんが口を閉じたのを確認し、轟さんが声を上げる。



「いやぁー。正直、こんだけやってても実感ないっす。

　京子はもっと、皆といたかったな〜とも思います！楽しかった！」



元気に振る舞っているが、声色は寂しさを滲ませていた。
…そうだな、確かに楽しかった。

彼らとのたわいない日常も、確かに価値あるものだったんだ。



「なんすか なんすか！しんみりムードはダメ、絶対。

　…まぁ、あれっすね。いつか会ったら、よろしくぅ！」



んふ、と思わず吹き出す。
なんという適当さ。アバウトすぎるだろ。

葛葉の『何笑ってんすか、もちさん！』なんて声は聞こえない。
俺は三枝君に視線を向け、促した。



「あー、出会った場所は最悪でも、人は良かった！

　とりあえず剣持さんは羨ましいと思いました！あざっした！」



三枝君に言葉に、今度は葛葉が吹いていた。
男共にジト目を向けながら俺も口を開く。



「なんと言いますか…。そうですね。

　三枝君の言うように、俺達が出会ったきっかけは最低最悪でしたね。

　でも、その中で過ごした日常は価値あるものだったな、と。



　皆さんの言葉を聞いて、改めて実感しました。ありがとう」




皆、清々しい表情。
闘いの終わり。すなわち、新たな夜明け。




「元気でな」



俺が片手を上げると、皆それぞれの方向に背を向けて歩き始める。
とても長い闘いだった。

誰1人欠けることなく突き進んだ。
実に充実した日々だったな。


残された俺とA。
少しだけ寂しさを感じた。


…世間は狭い。きっとすぐ会えるだろう。




「…改まってお別れしなくても良かったんじゃないの？」




Aは去っていった彼らの背中を見ながら呟いた。
この短時間で彼らの優しさに気付いたのだろう。



「一旦、ね。いつでも会えるさ」



そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

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