第四十九話 ページ2
(……もう、何度見た夢なんだろう)
悪夢から抜ける様に目を開いた少女は、ぼうっとした様子のまま、いつもの『癖』をしようと腕を動かす。
「っ……」
が、突然の肩を駆け巡る鋭い痛みによってそれは叶わず、苦しげな呻き声が小さく響いた。
何があったのかと見ればそこには、本来少女が巻いている包帯の上から止血する様にもう一度包帯が巻かれており。
(……あぁ、あのまま倒れてしまったんだ)
ようやく黄金屋での出来事を思い出した少女は、自身の不甲斐なさにいつもの如く溜息をつく。
「やっぱり君は常人より回復が早いみたいだ」
「! ……公子」
室内から聞こえた声にはっとして体から視線を外せば、窓枠に肘をつき、いつもの読めない笑みで彼女を見るタルタリヤの姿。
ここが北国銀行の一室だと気付いた少女の顔が訝しげなものへと変わり、のんびりと座っている光のない瞳と視線を合わせ……。
「あれから……どうなったのでしょうか」
旅人達は? 神の心は?
やけに響く豪雨の音に不安を募らせながら、状況が分からない少女は回答を待つ。
「予備プランに移行した」
「…………」
タルタリヤの言葉でそのほとんどを把握した少女は、静かに視線を窓の外へと向けた。
嵐が来たのかと思っていただけの風景が、途端に彼女の目には大きな獣が璃月を喰らい始めた様に見え始める。
『予備プラン』。
その名前の通り、神の心争奪において遂行が困難になった時の為の……使う予定ではなかったもの。
残念ながら、今まで見ていた岩神の亡骸は偽物だと分かり、しかし何故偽物を用意したのか分からず手詰まり状態。
神の心のある場所も当然不明。
タルタリヤの強硬手段は、致し方ないことではあった。
(予備プラン……『渦の魔神オセル』を禁忌滅却の札で封印から放ち、璃月港を襲撃させる)
大雨のなか窓に映る少女の瞳は、少しだけ心配するように揺らぐ。
渦の魔神オセルが、岩神との戦いに破れ封印され続けていた神だと知る彼女には、このままでは璃月港がどうなるのか想像くらいついていた。
(旅人はオセルを封印しに行ったんだ……。この非常事態、七星と……それから、璃月の危機なら恐らく仙人もそこに居る筈)
仙人が味方だとしても人間が神に勝てるのかどうか。
それとも、岩王帝君と呼ばれた岩神モラクスが解決することになるのか。
自分やタルタリヤの身に危険はないと少女自身分かってはいても、気にせずにはいられなかった。
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やみくも(プロフ) - もなかじゃんぼさん» お褒めの言葉本当にありがとうございます!お二人のような関係性が自分も大好きなので、分かってくださる方がいて下さって嬉しい限りです( ˃ ⌑ ˂ഃ )ありがとうございます!!!! (2022年5月17日 21時) (レス) id: 4ee0636c47 (このIDを非表示/違反報告)
やみくも(プロフ) - ぱぁわさん» 返信が遅くなり申し訳ございません!応援のコメント大変励みになります!ありがとうございます<(_ _)>ゆったり更新になってしまっておりますが、またお時間ある時に見て下さると幸いです! (2022年5月17日 21時) (レス) id: 4ee0636c47 (このIDを非表示/違反報告)
もなかじゃんぼ - 凄く凄くいい。このじわじわとくる、相手の腹を探るこの関係!!!!凄すぎる!!!どうやったらこんなストーリー思いつくのか!!!!!とても面白いです!更新頑張ってください!!! (2022年5月16日 1時) (レス) @page18 id: 0eb447a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぁわ - 続き待ってます。頑張ってください!! (2022年5月7日 23時) (レス) @page16 id: 2211ccb7f8 (このIDを非表示/違反報告)
ももは - 自分のペースで頑張ってください、!!ゆっくり待ってます!(*´ω`*) (2022年5月7日 21時) (レス) id: 563d44d02c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やみくも | 作成日時:2022年2月27日 0時