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「おはよう、国広!」
「おはよう、主さん」

癒月は和泉守に目もくれず、堀川に朝の挨拶をする。

「おはようございます、主!」
「おはよう」
「おはよう、ずお、ばみ!」

朝餉のおかずを皿に盛っていた鯰尾と、それを手伝っていた骨喰とも挨拶を交わし、

「おはようございます、あるじさま!」
「おはよう、主!」
「おはよう、いまつる、岩融!」

皿を置いて抱きついてくる今剣を癒月は受け止める。
仲が良いなと、歌仙と燭台切はその様子を微笑ましく見ていた。
ガシガシと岩融に頭を撫でられ、笑う癒月の瞳にやっと和泉守の姿が映る。

「主てめえ!」
「逃っげろー!」

目が合った途端、和泉守は癒月を捕まえようと手を伸ばしたが、ヒラリと避けられ、癒月は今剣を離して厨から素早く飛び出していく。
その後を和泉守はすぐに追い掛ける。
先程までの和やかな雰囲気は何処へやら。
慌ただしく駆けていくその後ろ姿を、厨にいた一同は見送った。

「今、大将と和泉守の旦那が駆けていったんだが」

いつの間にか粟田口の短刀達と一期一振も来ていて、不思議そうに厨を覗いていた。
何とも言えない顔をした薬研藤四郎が癒月達が走り去った方を指で指す。

「和泉守さんの髪、いつもと違う結い方でしたね!」
「なんて言うか…華やかだったよな!」
「よ、よくお似合いでした」

秋田藤四郎と厚藤四郎、五虎退はそう話す。

「ボクも今度あれ、やってもらおうっと!」

現代へ出掛ける際は癒月に髪を結ってもらう乱藤四郎は、羨ましかったらしくそう言う。

「和泉守さん、めちゃくちゃ嫌そうだったと思うんだけど」
「僕もそう思います」
「主君は楽しそうでしたけどね」

後藤藤四郎と平野藤四郎、前田藤四郎は呑気な兄弟達と癒月達が走り去った方を見比べる。

「和泉守さんのあの髪が理由で、あの追い掛けっこが始まったんだよね!」
「和泉守は鬼の形相だった」

鯰尾はにこやかに、骨喰は淡々と言い、

「あるじさまはあさからげんきなかたですから!」
「健康ということで良いだろう!」

今剣と岩融は元気で良いで片付ける。
燭台切は苦笑いし、歌仙は顳顬を押さえた。
「小さい子〜!」と包丁藤四郎に嬉々としてくっついていた毛利藤四郎が

「長谷部さんに怒られないと良いんですけどね」

と呟いたが、確実に怒られるだろう。
長谷部の怒鳴り声が響くのはあと何分後だろうか。
朝餉の準備をしながら、燭台切は思ったのだった。

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作者名:飛悠雅 | 作成日時:2020年3月5日 16時

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