弐 ページ3
頭の両サイドを編み込み、さらにそれを後ろで一つに三つ編みにした和泉守兼定だった。
怒りの為か、その頬は引き攣っている。
今剣達はポカンと口を開けて見つめていたが、だんだん笑いが込み上げてくる。
理由は明白だ。
非常に似合っている為である。
「強くてかっこいい」と言っている和泉守だが、その顔立ちは武骨ではなく美しいもので、中性的ですらある。
その為、この華やかなヘアスタイルが恐ろしい程似合っていたのだ。
「ど、どうしたんだい、それは？」
笑いを堪えたせいで震えた声で、燭台切は尋ねた。
尋ねたけど、犯人が誰かなどとっくに分かっている。
十中八九、癒月だ。
自分の髪は結おうともしないくせに、このような複雑なヘアスタイルを悪戯として施す。
被害に遭うのは主に長髪の刀剣男士である。
大抵の場合似合うのだが、今回の和泉守も例に漏れなかった。
だがやられた彼にとってはいい迷惑で。
「主にやられたんだよ…！」
苛立たしそうに言う。
「まぁ似合っているから、良いではないか！」
「良くねえ！」
岩融の言葉に、和泉守は噛み付くように言い返す。
今剣が宥めるように手を振る。
「そんなにいやならほどけばいいんじゃないですか？」
「へあぴんだか、へあごむだか色々使われててなかなか解けねえんだよ！」
和泉守も髪の状態に気付いてから解こうと奮闘したらしく、よく見ると所々髪が緩んでいたり飛び出したりしていた。
そんな風に岩融や今剣に答えているうちに怒りが再燃したらしい。
「主はどこ行ったんだよ！？」
また尋ねる。
「主なら…」
「まだ起きていない人達を起こしに行きましたよ！」
問いに答えようとした歌仙の声に、別の声が重なる。
え？と歌仙達が和泉守の後ろに目を向けると、粟田口の脇差兄弟がいた。
「起こしに行った相手は誰だ！？」
「あ、誰かと思ったら和泉守さん！ 髪型変えたんですね、よく似合ってますよ！ なぁ、兄弟？」
「あぁ、似合っている」
「うるせえ！」
和泉守の問いを見事にスルーし、更に髪型を褒める鯰尾藤四郎と、それに同意する骨喰藤四郎。
うがーっと和泉守が怒鳴ると、
「兼さん、もう厨に行ってたんだね！」
と和泉守の相棒兼助手が彼の声を聞き付けて現れた。
即座に和泉守は今朝何度も言った問いを口にする。
「国広、主はどこだ！？」
堀川国広は和泉守の髪については触れず、自分が歩いてきた方を見る。
「主さんなら…あ、来たよ」
程なくして堀川の言葉通り、癒月が姿を見せた。
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作者名：飛悠雅 | 作成日時：2020年3月5日 16時
