本社 ページ15
.
ピロン
「…ん…」
薄暗い部屋に通知と共にスマホが光る。
カーテンの隙間からは外の明かりが漏れている。
時刻は午前5時
今日は本社に行かなければならない。
ベッドから降りて伸びをすれば、凝った身体からバキバキと音が鳴った。…良さげな整体とか探しとこ。
ここ横浜中華街の住民たちの朝は早く、そこに店を構える私の家とて例外ではない。既に1階からは仕込みをしているのであろう物音が聞こえていた。
「お。A、早いな。おはよう」
「おはよ、兄さん。手伝えなくてごめん」
「いいよいいよ。今日は会社に行くんだろ？気をつけてな」
「ん。いってきます」
いってら、という兄の声に押されるように家を出る。
マネージャーに連絡を入れつつ、車庫から愛機を取り出しヘルメットを装着。
配信明けの朝日は目に染みるけれど、早朝の澄んだ空気に包まれた中華街に控えめに響く排気音と共に駆け出すこの時間は嫌いじゃない。
.
横浜からバイクを走らせて1時間半程度。愛機を駐車場へ停め、手慰みに鍵をチャリチャリと鳴らして歩く。
ビル群の中に佇む本社の前には、出発前に連絡したマネージャーが待っていた。
「おはようございます」
「！藤崎さん、おはようございます」
「徹夜明けです？寝癖ついてます」
「あ…っへへ、お恥ずかしい…ちょっと仮眠したので」
「お疲れ様です。じゃあこれ、一緒に食べましょ」
「ありがとうございます！会議まではまだ時間がありますし、中で食べて待ちましょう」
途中コンビニで購入した朝ごはんと差し入れを掲げれば彼女はパッと顔を明るくして、善は急げとばかりに社員証を通した。
自動ドアを潜ると広がる冷房の利いた空間に、じっとりと汗ばんでいた身体が冷やされていく。
「今日は企画の打ち合わせと、来月の予定調整ですね」
「3Dの方の話ってどれくらい進んでるんでしたっけ」
「先方がもう少しディテールにこだわりたいと…そちらの方もちょっと話しましょうか」
「はい」
有難いことではあるが、それなりに人気を伸ばしていると様々な仕事が舞い込んでくる。公式番組やその他企画、うちの会社も最近は歌や踊りなどステージパフォーマンスにも力を入れ始めたのでそのレッスンの予定もこうしてマネージャーと直接会ってすり合わせを行っている。実際に自分が立つ舞台の話をしていると、ふとした時に幼い頃夢見たアイドルのようだと思えて、実の所未だに慣れないものではあるのだが。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 883人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「2j3j」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もやし(プロフ) - 珀さん» ご感想ありがとうございます。実際の非公式Wikiをチラ見しながら書いたので丁寧と評して頂き嬉しいです。暑さも続くばかりですが珀さんもどうかご自愛ください。 (2022年8月4日 8時) (
レス) id: 99446a49f8 (このIDを非表示/違反報告)
珀(プロフ) - まじで非公式wikiとか死ぬほど丁寧でシンプルに好きです。扱いずらい界隈ですが、体調に気をつけて頑張って下さい！更新楽しみにしております！！ (2022年8月4日 4時) (レス) id: b2bcbd4f07 (このIDを非表示/違反報告)
もやし(プロフ) - 感想は気軽に書いていただくとありがたいです。なりチャや誹謗中傷などはお控えください。 (2022年7月26日 14時) (レス) @page8 id: 99446a49f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もやし | 作成日時：2022年7月19日 23時
