正反対の彼 (ページ13)

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皇輝side

『ねえ、バイト始めてからもう2ヶ月は経つけど全然進展ないの！俺どうしたらいい？』

休みの日、黒ちゃんとご飯を食べに来て延々と俺の話を聞いてもらってる

「だからずっと言ってるじゃん、デート誘えって！」

黒ちゃんは高校の時部活の大会で知り合って仲良くなった友達で、俺と違って共学に通ってた

今は長く付き合ってる彼女が居るけど、高校の時の黒ちゃんはモテてて女の子に慣れてたし彼女が居ない瞬間なんて無いんじゃないかっていうくらいにチャラかった

『急に誘ったら引かれないかな？』

だからこうして黒ちゃんに相談をする

「初日に一緒にご飯食べて、今も駅まで一緒に帰ってるんだろ？じゃあもうデートしかないでしょ」

今日ずっとこの会話の繰り返しで、結局俺に勇気が無いだけだ

午前で授業が終わった日にたまたま入った大学近くのファミレス

注文を聞きに来てくれた店員さんはきれいな人で目を奪われた

一目惚れ、だなんて認めたくはなかった。深く知っても無いのに好きになるなんてありえないと思うから

その店員さんの丁寧に笑顔で接客する姿が素敵で、俺と同年代くらいに見えるのにすごく大人に感じた

俺は今学校にしろ私生活にしろ親に頼りきりで、もちろんありがたくその道を選ばせてもらってるんだけど、俺も変わらなきゃなって店員さんを見て思った

トイレに行ったときドアにアルバイト求人のポスターが貼ってあるのを見て、ここの面接を受けることに決めた

大学生のうちに自分の知らなかった世界も見てみたい気持ちが半分、あのきれいな店員さんにまた会いたい気持ち半分で

幸運なことに俺はあの店員さん、つまりAさんと知り合うことができた

Aさんはいつも優しく笑ってくれて、すごくかわいい

知って行くにつれてものすごく自然にAさんを好きになった

誰かに恋をすることには慣れていなかったけどすぐにこの気持ちは恋だとわかるくらいにAさんを好きになったことは当たり前のことのようだった

でもAさんはあまり自分の話をしないし何か影を感じる瞬間があって、そこに惹かれてもいるしだからこそあと一歩の勇気が出ずにいる

そしてもう一つ勇気が出ない理由は、Aさんの話によく出てくる’わく’という名前

コンビニのバイト先の先輩らしく、話し方からその人をすごく信用してるのが伝わってくる