9 ページ33
〜ショウside〜
・
禍々しい妖気が至る所から感じられる
息苦しい霧がかった、薄暗い景色。
図鑑でも見たことのない植物や花々達が
俺達を囲う様にざわめいていて
森の奥には奇妙な動物の気配すら感じられる。
俺は、マサキみたいに動植物の"声"を
読み取ることは出来ない。
それでも、突然現れた俺達をコイツらが
歓迎している状況ではないことは確かに分かる。
…魔法書に書かれている地学では
ここは、乾燥地帯の筈なのに
足元に生い茂る草木からは酸素の薄い
湿気が漂う気がするのは、気のせいだろうか。
…相変わらず、気味の悪い場所だ。
・
『…サトシ。部屋に入る時はノックしてって
いつも言ってるじゃないか』
『リョウ。こいつ借りてくぞ』
部屋に突然、姿を現したサトシに
事情も説明されないまま連れられ
テレポートした先は
謎に包まれた黒の組織＿＿
黒龍神のアジトの中にある古の森だった。
古くから存在するその森は
黒龍神の隠れ家とも言われていて
普段は厳重な規制線が貼られている為
俺達五竜神の王族でも容易に立ち入ることは
出来ない、いわゆる曰く付きの場所だった。
そんな、日常とは縁遠い魔のエリアに
微かにこだまするのは…
「っ、うっ、うぇええぇん！」
聞きなれた紫の泣き声。
「ジュンっ！！」
俺達が来る気配を彼は既に察していたのか
目の前に突然現れた俺とサトシに驚きもせず
「っ！ショウくんっ！！」
縋る様にして俺の腕に飛び付いてきたのは…
「、しょーくっ、っく…うっ、
さびしかったよお…っ！」
「こわかったね…もう大丈夫だよ、ジュン。
ケガはない？」
「っ、う、ん…らいじょーぶ…っ」
ガサガサッと草木を掻き分け
俺の足にしがみついた小さな身体を抱き上げ
その冷えきった体温をあっためるよう
力強く抱き締める。
良かった…間に合って…
涙の膜に張られ震える青紫の瞳を見て
カズから事情を聞いておいて、本当に良かったと
心の底から、安堵の情が湧き上がる。
「…お前、なんでこんな所にいんだよ｣
「っショーくんに…っ、おみやげ…っ
さがしてたら、かえれなくなっちゃって…っ、
うぅっ、ごっ、めんなさぁい！！」
そんな俺とは対照的に眉を潜め面倒くさそうに
俺の腕の中で嗚咽を漏らす
小さな魔法使いを睨みつけるサトシ。
…実の弟に良くもそんな非道な顔が
向けられるもんだ。
俺なんか、カズが産まれてくれた時は
もう泣いて喜んで今でも可愛がってんのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 630人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星羅*(プロフ) - きよさん» きよさん、ご無沙汰しております！実はそうだったんですよぉ…リョウくんとの想いの狭間で今揺れまくっちゃってます。サトシの真意に関しましては今後全て明らかになりますので次更新も是非遊びにいらして下さいませ！今回もありがとうございました！ (2020年10月3日 9時) (
レス) id: c8d688db8a (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - 星羅さん、更新ありがとうございます。ショウの初恋はサトシだったんですね。邪険にされたら辛いわけですね。女の子の格好をしていたとはいえ、サトシは本当に気がついていないのか謎ですね。なんにしても二人とも素直になってほしいです。続きの更新お待ちしています。 (2020年10月3日 0時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - いえいえ、こんな時にお話しを更新してくださる星羅さんや他の作者様の方がありがたいです。お話しを読ませてもらって、いつもと変わらない幸せな癒され空間に浸れるので、本当に感謝しています。ありがとうございます。 (2020年3月28日 20時) (レス) id: e294ac0748 (このIDを非表示/違反報告)
星羅*(プロフ) - きよさん» きよさん、こんばんは！この大変な状況の中で早速遊びにいらして下さり本当にありがとうございます！そうなんです、お姫ちゃんには実は重大な秘密が…？今回は拙作で1番もどかしい2人を表現出来たらなんて考えておりますのでそちらも合わせて楽しんで頂けると幸いです！ (2020年3月28日 19時) (レス) id: 44ba3bae8a (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - 星羅さん、更新ありがとうございます。「 Fake Love 」お待ちしてました。翔くんには何か秘密があるみたいですね。姫さまなんて似合いすぎです。そして素直になれない二人がまたもどかしいですね。次回も楽しみに待っています。 (2020年3月28日 16時) (レス) id: e294ac0748 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星羅
| 作成日時：2018年11月29日 21時
