・6 ページ35
Sサイド
片山さんを見送って、引き続き呼び込みに励む。
始めはぎこちなかった接客も段々慣れてきた。
時々赤面している女子高生や、怖そうなチンピラたちに話しかけられたときには何故か智くんが横から助け舟をだしてくれた。
時刻は午後7時30分。
慣れない下駄に足が疲れてきた頃、屋台から相葉くんと松潤が顔を出した。
「ごっめん！ 悪いんだけどさ、ニノと大野さんでしばらくここ代わってもらってもいい？」
「腹減ったからなんか買って来たいんだ。すぐ戻ってくるから！ 翔ちゃんはそのまま接客お願い」
「了解、ゆっくり行ってきな」
始めからずっと調理を担当していた二人に代わって、ニノと智くんで屋台の中に立った。
その間接客は俺一人に任されることになる。
緩みかけていた気持ちをもう一度引き締めて、青を帯び始めた空を仰いだ。
「いらっしゃーい！ 八塩で大人気の『喫茶storm』オリジナルかき氷だよー！」
「あの、すみません」
そして、百合の薫りは訪れた。
「アイスコーヒーをひとつ、いただけませんか」
漆黒のスーツを綺麗に着こなした若い男性は、微笑みを保ちながら落ち着いた声色で言った。
その音は、静かに奏でられる独奏曲のように
どこか寂しげに、囁いていた。
松潤や相葉くんに負けない手際の良さでニノから受け取ったコップを、甘いものなど知らなそうなその人に渡す。
その人は割れ物を扱うかのように、丁寧な手つきでそれを受け取って、しばらく、その場でじっとコーヒーを見つめていた。
不思議な人だと、思った。
「……百合、ですか？」
「え？」
「あ、いえ、すみません。花の香りがしたので」
ふわり。
その人は本当に、花みたいな人だった。
「ええ。いつも仕事場に置いているので、香りが付いたのかも。百合の花が好きなんです。……思い出の花で」
微笑みは何よりも温かで優しくて
それなのに、伏せがちな目はどこか、哀しい。
「……花って素敵ですよね。そこに在るだけで…特別な何かが得られるような気がして」
「はい。いつも心が洗われます」
緩やかに頷いたその人は、アイスコーヒーにそっと口をつけると……一歩。
俺の元へ歩み寄って、囁く。
何かを告げる鐘のように。
「________よしもと、こうや」
「__ッ………！？」
ひやり、と
温もりを忘れた風が、俺を嘲笑うように
「やっぱり……あなたが櫻井翔さんですか」
名も知らぬ天使の背中を、押す。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花櫻(プロフ) - ゆいさん» いえいえ、こちらこそありがとうございます！(*^^*) これから少しずつ、5人の過去と繋がりを明らかにしていく予定です(にやり) 更新はゆっくりですが、どうか応援よろしくお願いします！ メリークリスマス！笑 (2016年12月25日 19時) (
レス) id: 69bc2f5e0e (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - ゆいです！花櫻さんに覚えていただけて、光栄です！相葉くんの過去と、翔くんがこれからどんな行動に出るのか、とっても気になります！更新楽しみにしてますね！そして‥‥メリークリスマス(^ ^) (2016年12月25日 9時) (レス) id: 2b88837529 (このIDを非表示/違反報告)
花櫻(プロフ) - ゆいさん» 覚えてますよ〜！笑 コメントありがとうございます(*^^*) 今回のお話の中心は相葉ちゃんです☆ ぜひぜひ楽しみにしていただければ嬉しいです！ (2016年12月18日 21時) (レス) id: 69bc2f5e0e (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 花櫻さん！ゆいです！覚えてますか？（笑）今回もまた愛読者の1人として読ませていただきました！相葉くんにも、いろいろな過去があるようですね‥‥これから5人がどのようにして向き合っていくのか。楽しみにしてますね！！！ (2016年12月18日 19時) (レス) id: 2b88837529 (このIDを非表示/違反報告)
花櫻(プロフ) - cloverさん» はじめまして！コメントありがとうございます(*^^*) そこまで言っていただけるなんて、とっても嬉しいです…！ 近頃亀更新で本当に焦っていたので、cloverさんの言葉に少し安心しました(´∀｀) 今後もできる限りが 頑張りますので、どうか応援よろしくお願いします！ (2016年11月30日 7時) (レス) id: 69bc2f5e0e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花櫻
| 作成日時：2016年10月7日 23時
