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Sサイド
意外と力が強い大野さんに腕をぐいぐい引っ張られてやってきたのは、倉田さん家の前の公園の中。
ぶらんこに腰かけた大野さんは、そのままきこきこと漕ぎ出す。
「翔くんも座りなよ」
「……大丈夫です」
大野さんの誘いを丁重に断った俺は、ブランコの前の柵にもたれた。
5月の夜は空気が澄んでいて、薄手のパーカーで少し涼しいくらいだ。
灰色がかった空は、八塩とはまったく別のものみたいに見えた。
「……仕事、慣れた？」
囁くような言葉が耳を掠める。
大野さんの声は保護色みたいになめらかで、それでいてどこか頼りない。
「……分かりません。まだ働き始めて二日目ですよ」
「そっか。そりゃそうか」
親戚のおじさんみたいにうんうん頷いて、大野さんは地面をえいと蹴る。
きぃ、と音をたててブランコが揺れた。
「相葉ちゃんとはいい感じみたいだけど」
「……相葉くんは親切すぎます。俺はそれに甘えているだけです。松本さんも仕事のアドバイスをくれる。……二宮さんとは、まだ少し距離があるけれど」
大野さんは、耳に付けている無線のイヤホンを弄ぶ。
「悪いね。ニノはほんとは良い奴なんだよ。ただ、素直じゃないだけで」
「ええ、分かってます。俺のことを許せないのは、それだけみなさんのことを大切に思っているってことですから。
それでも仕事のことはちゃんと教えてくれる。……どこまでも優しい人ですね」
「んふふ、今度それニノに言ってやってよ」
……そう、できたらいいのに。
人を褒めて、褒められて、慰めて、慰められて、笑いあって……
そんな『仲間』が、できたらいいのに。
「……翔くん」
大野さんの声色が変わる。
何かとても大切で、忘れてはいけない何かを、伝えたいような……そんな色。
「……翔くんはすっげえ優しいよ。でも、その優しさを他人に使いすぎてる。
もっと自分を甘やかしていいんだよ。
自分の立場とか、他人への迷惑とか……
翔くんはそういうの、考えすぎなんだよ」
大野さんらしい、不器用な言葉。
でも俺が分かるのは……それが、大野さんの言葉だという事実だけ。
「……優しさの使い道は、他人のため以外に何があるんですか……？」
それは、純粋な疑問だった。
だけど大野さんはため息を吐いた。俺はその意味さえも分からなかった。
その時、大野さんの顔がぱっと上がる。
イヤホンをぐっと抑えて、ぽそりと呟いた。
「……名無しさん、出たみたい」
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花櫻(プロフ) - さとさん» ありがとうございます！ 実際持ってるところ想像したらかっこいいですよね〜(´∀｀*) 更新頑張ります☆ (2016年9月24日 22時) (
レス) id: 69bc2f5e0e (このIDを非表示/違反報告)
花櫻(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます！これからどんどんかっこよくなっていきますよ〜！笑 更新遅くなってしまうかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします♪ (2016年9月24日 22時) (レス) id: 69bc2f5e0e (このIDを非表示/違反報告)
さと(プロフ) - 拳銃持つ翔さんがカッコよすぎるよ(^o^)/ 二宮さんも照れ隠しは半端ない！ 次回も楽しみにしています(^ ^) (2016年9月24日 22時) (レス) id: c9a4fb71b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 今回もとっても面白かったです！少し気まずい雰囲気だった、ニノと翔ちゃんの仲が縮まってよかった〜笑 「背中を守る」なんて、またかっこいい言葉！次も楽しみに待ってますね！ (2016年9月24日 21時) (レス) id: 2b88837529 (このIDを非表示/違反報告)
花櫻(プロフ) - ひまりさん» ありがとうございます！お久しぶりです♪ 更新遅くなってしまうかもしれませんが、気長ーに待っていただければ嬉しいです笑 よろしくお願いします！ (2016年9月20日 21時) (レス) id: 69bc2f5e0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花櫻
| 作成日時：2016年6月6日 23時
