水面の桜 2

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「「「お願いしまーーす！！」」」


男子高校生9人分の叫び声が、夏の青空に響く。


小学生以来の、懐かしいこの光景を、俺は部員用の応援席で眺めていた。





「……やべ、緊張してきた」

「…………俺も」



先輩の引退試合という大舞台で、自分の親友がスタメンで投げる。

それは、なんともいえない緊張感に襲われるものだった。









＿＿＿バシッ


「ストライク、ワン！」






相葉さんの綺麗なフォームから繰り出されるストレート。


不調の気配を感じさせないそれは、見事なくらいにキャッチャーのミットに吸い込まれて
審判の重々しい叫びが、乾いた空に響いた。





「……すげ」


相葉さんの気迫は、1球だけで十分なのに






＿＿＿バシッ


＿＿＿バシッ





2球、3球。

相葉さんが投げる度、辺りの空気が裂けられている気がした。






『相葉さんはこのチームのエース。監督の超お気に入り』



本人には悪いけど、そんな噂を聞いておきながら
普段の印象が邪魔をして、どこかでなめていた。



……でも





「やたーっ！ ワンナウト〜！」




笑顔で味方にサインを送る、あの人の姿は

やっぱり太陽みたいに、輝いていた。



それはきっと、あの人が、声をかけてくれたから。





「相葉さんの姿……翔ちゃんに、見せてあげたいな……」


小さく呟いて、一般の人の応援席に目をやると




仏頂面の大野さんが、しっかりとビデオカメラを掲げていた。

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