水面の桜 2

81 〜過去〜 ページ40

Oサイド









二宮市立病院。


俺の母さんが、入院していた場所。








俺の父さんは、俺が生まれてすぐに離婚して、家を出て行ったらしい。


幼い頃から体が弱かった母さんは、町の病院で入院していた。




院長さんはとても優しい人で、俺の家庭の事情を聞いて
余っている病室を貸して、俺に、ここにいていいと言ってくれた。






毎日、毎日、看護婦さんとしゃべって

母さんの様子を見に行って、時には手伝いをして。







そんな環境に、俺と同じ年頃の子はいなかった。

お年寄りや大人の人ばかり。


いたとしても、その子はすぐに退院したり、

……時には、病気に負けて、帰らぬ人となったり。









＿＿＿だから



母さんの病気が治りかけたころ、お腹に弟がいると聞いた時は


広い廊下をぴょんぴょんと跳ね回って、大喜びした。









やっと、やっとずっとそばにいてくれる子に出会える。


ずっとずっと、一緒に遊んで、しゃべって、笑いあえる子に出会える。





そう考えると、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。









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＿＿＿それから



母さんの病状が悪化して、弟が死んだのは


6歳の春のことだった。

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