16 ページ16
Nサイド
【爆発まであと 1：13：39】
階段を抜けて、会議室のドアを開ける。
比較的広い部屋の壁際に
翔ちゃんはゆっくりと降ろされた。
「っ……重かったでしょ。ありがとう」
「そんなことない。……辛いでしょ、括り直すね」
汗でびっしょりと濡れた翔ちゃんの背中をそっとさする。
無理矢理に笑う翔ちゃんに対して
血まみれのカーディガンを括り直す大野さんの表情は、険しかった。
……きっと、悔しいんだろう。
すぐ傍にいておきながら
翔ちゃんに大けがを負わせてしまった、自分が。
……相葉さんもそれを察しているらしく
大野さんの肩を一回、小さく叩くと
大野さんは、顔を上げた。
「……リーダー、メール見た？」
「え？」
「あの、作戦やる前の」
「ああ……『くれぐれも気を付けて』ってあれ？」
「違うよー。その次の」
「ほら、今見てよ」と諭す相葉さんに
大野さんはポケットから俺の携帯を出して、ロックを解除する。
「＿＿＿＿っこんなの、くれてたの」
「ふっふ〜」
言葉も漏らさず、ただ表情を和らげる大野さんの後ろから
ちらっと画面を覗く。
『正直怖いね。そっちも絶対無理しないように』
『五人なら怖くないよ。絶対大丈夫』
感情もないはずの画面から
相葉さんの優しさと頼もしさが伝わってくるようだった。
大野さんの反応を見て、相葉さんは嬉しそうに微笑む。
「ね、五人だから成功したんだよね。
……誰も、悔しがる必要なんて、ないはずなんだよ」
そう言って、相葉さんが大野さんの肩をぽんと叩くと
大野さんはやっと、いつもの笑みを見せた。
「……ありがと。みんな」
「いえいえー、とんでもない！」
「二人が頑張ってくれなきゃ、成功しなかったんですから」
みんなで救ったんだ。たくさんの命を。
……みんなとだから、できたんだ。
「……翔ちゃんも、ありがとう」
「いや……俺は何も……」
「嘘だよ〜。かっこよかったよ？『逃げてくださいっ！』って」
「っはは」
ずっと、ずっと痛みに歪んでいた顔が
やっと、穏やかな笑顔に変わった。
ばれないようにと、電気はつけていない。
暗闇の部屋。
五人分の体温。
……それだけで、十分だ。
この五人での空間が、いつまでも続くこと。
それが、今の俺たちの行動意義なんだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 437人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山にのあい(プロフ) - すごく感動しました。とても良い作品です泣 (2016年2月22日 16時) (
レス) id: 3c4616375b (このIDを非表示/違反報告)
花櫻(プロフ) - 彩佑実♪arsさん» ありがとうございます！本番で落ち着いて、いつも通りの自分が出せたらきっと大丈夫ですよ！ 生意気言ってすみません(^_^;) 応援していますね！ (2016年2月18日 16時) (レス) id: 1f16760700 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実♪ars(プロフ) - 合格おめでとうございます！ 私は明日私立、3/3公立なので頑張ります＾＾ 新作楽しみにしています♪ (2016年2月15日 19時) (レス) id: 977b44e406 (このIDを非表示/違反報告)
花櫻(プロフ) - ひなさん» いえいえ！楽しみにしていただけてすごく嬉しいです(*^_^*) 新作もよろしくお願いします！ (2016年2月14日 18時) (レス) id: 268cdfb6c7 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - そうだったんですか汗はやとちりすいません！焦らずやってください(._.`)受験おつかれさまでした(^^) (2016年2月14日 17時) (レス) id: 287a42e902 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花櫻
| 作成日時：2015年6月9日 22時
