【d!】Suber Zucker【現パロ】 (ページ1)

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「Aさん、少し外に出てくるからお店任せてもいいかしら？時間になったら閉めておいてもらって構わないから」

「大丈夫です店長。鍵はいつものところにおいておけばいいですか？」

「ええ、じゃあお願いするわね。お疲れさまです」

「お疲れ様です」

店の裏口から店長を見送ってから在庫を確認するために店内へと足早に戻る。在庫表を片手にショーケースの中へと目を滑らせる。

(季節のショートケーキは今日10個作って、昨日の残りが2個、今ある数が3個だから返品は無し。ピスタチオとグレープフルーツのヴェリーヌは昨日の残りが2個で今日作ったのは2個で今あるのが3個.......1個返品か.......)

サラサラとショーケースの中のケーキを数えながら在庫表に記された昨日の残りと今日作ったものを照らし合わせて今日の廃棄の数を記していく。この作業にももう随分と慣れたものだ。

ここは「コンディトライ・ロータ・ファーデン」。名前につくようにケーキ屋である。ケーキ屋と言ってもマドレーヌやフリアン、ダックワーズ等の焼き菓子や大福、団子、あんみつ、どら焼き等の和菓子類も取り扱っている。店自体は小規模ではあるがその品ぞろえの豊富さでは大手の菓子メーカーにだって負けやしない。お客様はそう多いわけではないが、そういった界隈では知る人ぞ知る名店として名を知られていて、私はこの店でパティシエ兼販売スタッフとして雇われている。

(今日はケーキがよくうごいてたな、祭りがあったらしいからその影響かな。和生とギフトはあんまりだけどジュレは動いてる、もう少しジュレ増やしてもらってもいいかも知れない)

もう少しで閉店、という時間が近づけばやるべき仕事は大体終わっていて残るは閉店作業のみになるのだがさすがに閉店時間前にその作業をすることはできない。ぼんやりとショーケースを眺めて考察を深めることしかできないのだ。

─カランコロン

そんな時、店の扉につけられたベルが軽快な音を鳴らした。今日はもう業者らが来る予定はなかったはずだからその扉を開いた人物はつまりお客様だ。

「いらっしゃいませ」

休憩モードから切り替えて微笑んで接客モードに入る。入ってきた人物はそれに対して会釈で返してそれから値踏みするような視線をショーケースに向けた。