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コネシマさんは呆れたように笑うが、私は少しも笑えなかった。
何だ、これは。
どうして彼がこんなことを思いついたのかと考えて、数日前のやり取りを思い出す。
『提案がお互いの利益になるということを、論理的に説明しないと。』
まさか、彼は、これを実行しようとして？
｢俺を殺して世界を救うか、俺を見逃し世界を見捨てるか。それとも、俺も世界も助かる道を選ぶか。｣
いくらありえないと頭の中で否定しても、目の前の現実が否応なくそれを突き付けてくる。
何も映さない、虚ろな目と視線があった。
｢俺は功利主義者やから、3番目をオススメするけどな？｣
――つまるところ、私は彼のことを少しも理解していなかったのだ。
この人は、それが合理的な選択だと認識すれば、どんな事でもやってのける。
これは決して
だったら、もう、私に出来ることはひとつしかない。
｢ッ…………！｣
ホルスターから拳銃を抜き、冷たい銃口を彼へと向けた。
当の彼は逃げようとする素振りもなく、ただ、少し悲しそうな目で私を見つめている。
手の震えを必死に抑えて、引き金に指をかけた。
｢………………なん、で……！｣
絞り出すような言葉は誰に向けたものだったのか、自分でも分からない。
けどひとつ確かなのは、私は彼ほど合理的な判断はできなかった、ということだ。
引き金に指をかけたはいいが、一向に引けないまま。
私はついに諦めて、銃を下ろした。
だって、目の前にいる狂人は、いつもうるさくて、でも優しくて、よく笑って、冗談を言いあって、毎日を共に過ごしてきた上官なのだ。
軍人としては、コネシマさんを撃ち殺して、軍法裁判で真実を訴えるか、この場で自分も死んでしまうのが正しい。
……だけど、私にはその正しい判断ができない。
｢ペンを、お借りしたいのですが。｣
泣きたくなるような情けない声しか出なくて。
しかし、もはやこうする他はない。
差し出されたペンを右手で受け取り、続いて書類を取ろうと出した左手にすっ、とコネシマさんの手が添えられる。
｢やっと渡せて嬉しいわ、これからもよろしくな。｣
薬指のダイヤモンドは、モニターの光を反射してキラキラと輝いていた。
百何回目のプロポーズ。
(ともすれば感情に判断を狂わされた者同士、お似合いかもしれない。)
終わり
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笹良柚紀(プロフ) - 碧さん» コメントありがとうございます！今後も拗らせた話を中心に書いていきますので、お付き合い頂ければ幸いです〜 (2019年11月8日 21時) (
レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 初めまして、いつも楽しく読ませていただいております！ヤンデレ大好きです（真顔）。これからも頑張ってください！応援しています。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: b98328a63d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：笹良柚紀
| 作成日時：2019年2月9日 3時
