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私がいけないんだ。
わがままを言って先生を呼んで、無理に部屋の中に引き込んで。
だから、本当は優しいひとらん様に、人殺しをさせてしまった。
――そう思ってしまう方が楽だった。
だって私は彼の妻で、この屋敷で一緒に暮らしていく他にないのだから。
実際、その後の彼は優しい夫に戻っていた。
もっとも、私はその優しさに甘えることはやめ、一切を望まず、彼に与えられたものを喜んで受け取るだけの人形として振舞っていたが。
「仕立て屋がいい生地が入ったというから、Aのドレスを新調しようと思うんだ。どうかな？」
「嬉しいです、ありがとうございます。」
本当は着るものなんてどうでもいい。
けど、ひとらん様が上機嫌で、優しいままでいてくれるなら、私は彼の言うがままに首を縦に振る。
一番欲しいのは心を許せる相手だが、きっとその願いは、彼の機嫌を損ねてしまうだろう。
部屋にいる時はいつもひとりぼっち。
呼べばメイドが来てくれるけど、彼女はきっと私よりひとらん様の味方。
先生のことを言いつけたのも、メイドの誰かである可能性が高い。
夜はとくに、ひどく寂しい気持ちになる。
窓の外に輝く星を眺めていると不意に涙がこぼれて、私は窓を開け空へと手を伸ばした。
誰にも、何にも届かないことくらいわかっている。
それでも、この孤独の中で生きるにはありもしない希望にすがるしかなかった。
「なんやお前、星をつかもうとか考えるタイプなん？」
突然、手袋をした手が私の手首を掴んで。
ぎょっとした私が手を引っ込めようとすると、その勢いに乗って手袋の主が部屋へ入ってきた。
「あ、あなたは……！」
驚いて声をあげかけて、こんな場面をひとらん様に見られたら大変だと思い自分の口を手で塞ぐ。
「どしたん。ってか、お前の口塞ぐんは普通俺の役目やと思うんやけど。」
彼はローブについたフードを目深に被っており顔はよく見えないが、体格や声から男性であることは分かる。
「み、見つかったら殺されてしまいます……。お願いですから早く出ていってください。」
「そら領主の館やからな。命の危険は覚悟の上で来とんねん。」
ローブに手袋、夜に忍び込んでくるということは、盗賊だろうか。
とりあえずお金になりそうなものを差し出して早く帰ってもらわねば。
「わ、わかりました。アクセサリーとかでいいですか？ 私、目利きはできないので適当に持ってきます。」
「あー、うん。まあたしかに俺、本業は盗賊やけどな？」
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笹良柚紀(プロフ) - 碧さん» コメントありがとうございます！今後も拗らせた話を中心に書いていきますので、お付き合い頂ければ幸いです〜 (2019年11月8日 21時) (
レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 初めまして、いつも楽しく読ませていただいております！ヤンデレ大好きです（真顔）。これからも頑張ってください！応援しています。 (2019年11月8日 20時) (レス) id: b98328a63d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：笹良柚紀
| 作成日時：2019年2月9日 3時
