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「ちょ、ちょっと苦しいって。大体鬱先生こそ浮気ばっかりで私を棄てようとしてる癖に。」
彼女の言葉で我に返った俺は腕の力を弱めた。
そのまま無言でいれば、どうして否定してくれないの……と消え入るような声が辛うじて耳へ届く。
いつ頃からだろうか。
元から付き合いのいいAは男友達と遊ぶことも多かった。
俺は彼女が浮気をしていたとは思わない、そういうことが出来る器用なタイプではないから。
でも、不安だった。
浮気でなくても人間は心変わりをする生き物、その可能性を思い浮かべるだけでも心臓が握り潰されるようで、生きた心地がしない。
だから俺は、彼女の心が俺から離れる前に手を打つことにした。
「他の女の子の匂いがする鬱先生なんて嫌い、嫌いなの……離してよぉ……！」
俺の服から香る甘いバニラもAにとっては感傷に塗りこまれる塩のようなもので、腕の中の彼女はまた子供のように泣きじゃくっている。
どういうことか？
俺は女物の香水を何種類か買って、Aと会う前にわざと服に匂いをつけるようにしたのだ。
最初の数回は一瞬辛そうな顔をするだけで何事もないように振舞っていたAだが、何度目かの時ついに我慢出来なくなったのか匂いについて詰問してきた。
俺が特に弁解もせず黙秘を貫いていると、彼女の中で何かが壊れたらしい。
突然馬乗りになって首を絞めてきたのだ。
本当に殺されるかもしれない、多少はそう思う程の気迫だった。
しかし俺の心を支配したのは恐怖でも苦痛でもなく、むしろそれは安寧に近いもので。
途中で我に返った彼女に平謝りされたのは俺にとっては拍子抜けだが、同時に理解した。
まだ、壊したりない。
だから安心出来ない、と。
「俺のこと、嫌いになったん？」
子供の駄々のようなものと分かっていても、Aに嫌いと言われるのは心が痛む。
少し意地悪をしてやろうと腕を離せば、彼女はまるで棄てられた犬のような目で俺を見上げる。
「あ……ちが、違うの……。やだやだ、ごめんなさいっ……もう嫌いなんて言わないから……！」
縋りいてくるAの手を優しく取って、自分の首へと誘導した。
まだ赤く痕がついているのか、彼女は動揺し視線を逸らす。
「大丈夫。Aは俺のことが好きだから、それで不安になるんやろ。」
彼女が首を縦に振るのと同時に俺も頷いた。
そう、大丈夫、彼女は俺のことが好きで好きで仕方がないんだ。
「で、でも私……鬱先生のこと殺したくないよ。」
「そっか。」
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笹良柚紀(プロフ) - ごみくずさん» ご満足いただけたなら何よりです、改めてリクエストありがとうございました！ (2018年10月9日 20時) (
レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
ごみくず(プロフ) - 笹良柚紀さん» わぁぁぁあああありがとうございます……！！！お互いの依存具合とか壊れっぷりが半端なくだいすきです…文章もとっても綺麗で…ほんともう…ありがとうございます…() 素敵な作品を本当にありがとうございました！これからも陰ながら応援してます…！ (2018年10月9日 13時) (レス) id: 716d47e424 (このIDを非表示/違反報告)
笹良柚紀(プロフ) - ごみくずさん» リクエストありがとうございます！ ゆっくり消化ですが気長にお待ちいただければ幸いです〜 (2018年10月7日 14時) (レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
ごみくず(プロフ) - コメント失礼します。貴方様の文章が大好きで、いつも更新の度に楽しませて頂いてます。そこでリクエストなのですが、｢ut先生、好きすぎて暴力を振るってしまう夢主とそれを受け入れてしまうut先生、共依存｣が見てみたいです…気が向いたらお願いします (2018年10月7日 8時) (レス) id: 716d47e424 (このIDを非表示/違反報告)
笹良柚紀(プロフ) - 変なカピバラさん» コメントありがとうございます！ そう言って頂けると大変励みになります。不定期更新ですが今後とも楽しんで頂ければ幸いです〜 (2018年7月25日 10時) (レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：笹良柚紀
| 作成日時：2018年4月10日 22時
