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「旧人類を殺したのは旧人類だ。しかし、そういう意味では俺も旧人類を殺しているな。」
彼は自嘲気味に笑う。
私には何がおかしいのかまるで理解出来なかった。
7桁も殺してるから頭がおかしくなって妄想に取り憑かれているのか？
けれど、それにしては不気味なほど理性的な目をしている。
「お前の見ている数字は、俺が何も出来ないうちに炎と煙と瓦礫の中に消えていった命の数だ。旧人類は失敗作だった。殺し合い自ら滅びに向かう事を選択してしまった。それを止められなかった俺を含めて、だがな。」
「……貴方、何を見てきたの？」
ついさっき、何も出来ない自分の前で大切なものが炎に呑まれて失われてしまったからだろうか。
私は彼の話をただの妄想と切り捨てることが出来なかった。
「戦争という名の、天国と地獄だ。」
彼も昔枢機卿がそうしたように、私には見えない何かを見上げてそう言った。
「数奇な事に俺は生き残った。だから、やり直す。自由意志の失敗をやり直す。人類の思念を統合し完璧な繁栄へと導いてみせる。その為には何千万何億でも殺す。それが守れなかった者達への贖罪になるのだ。」
言っていることは半分も理解できない。
それなのにどうしてこんなに彼の言うことに惹かれるのだろう。
どう考えたって狂っている、悪魔に心を呑まれたに違いない。
彼はもう、人である事をやめてしまっているのだ。
彼について行ってはいけない、枢機卿の所へ帰らなくちゃ。
頭の片隅でそう思っていても私の口は止まらなかった。
「私を連れて行って。」
「何？」
彼は訝しげに私を見た。
自分でもおかしな事を言っていると思う。
たくさん大切な人達が彼の手によって殺されてしまったのに。
本当なら殺したいほど憎い相手のはずなのに。
「私、見たいの。貴方が背負った死を、これからただ掃いて捨てるだけの死を。この眼で見たいの。」
彼は是とは言わなかったけれど、無言でボロボロの私に肩を貸してくれる。
ふと、故郷の町を出る時の枢機卿の悲しそうな顔を思い出した。
もしかすると、あの人はこうなる事を予知していたのだろうか。
恩師を悲しませるのは辛いがそれも仕方がない。
だって私の眼はそもそも、死を視るためにあるのだから。
そんなものは人を救う奇跡の力では有り得ないのだから。
――私はきっと最初から教会の騎士ではなく、死を視る女だったのだから。
ゴルゴダの丘は何処。
(そして咎人は従者を連れて、長い旅路へ歩み出した。)
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笹良柚紀(プロフ) - ごみくずさん» ご満足いただけたなら何よりです、改めてリクエストありがとうございました！ (2018年10月9日 20時) (
レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
ごみくず(プロフ) - 笹良柚紀さん» わぁぁぁあああありがとうございます……！！！お互いの依存具合とか壊れっぷりが半端なくだいすきです…文章もとっても綺麗で…ほんともう…ありがとうございます…() 素敵な作品を本当にありがとうございました！これからも陰ながら応援してます…！ (2018年10月9日 13時) (レス) id: 716d47e424 (このIDを非表示/違反報告)
笹良柚紀(プロフ) - ごみくずさん» リクエストありがとうございます！ ゆっくり消化ですが気長にお待ちいただければ幸いです〜 (2018年10月7日 14時) (レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
ごみくず(プロフ) - コメント失礼します。貴方様の文章が大好きで、いつも更新の度に楽しませて頂いてます。そこでリクエストなのですが、｢ut先生、好きすぎて暴力を振るってしまう夢主とそれを受け入れてしまうut先生、共依存｣が見てみたいです…気が向いたらお願いします (2018年10月7日 8時) (レス) id: 716d47e424 (このIDを非表示/違反報告)
笹良柚紀(プロフ) - 変なカピバラさん» コメントありがとうございます！ そう言って頂けると大変励みになります。不定期更新ですが今後とも楽しんで頂ければ幸いです〜 (2018年7月25日 10時) (レス) id: da544bddee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：笹良柚紀
| 作成日時：2018年4月10日 22時
