３年Ｊ組 愉快な仲間たち

16：ふっかって優しい ページ16

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〈Tatsuya.F〉




比較的家が近い俺は皆と早々に別れて、既に制服から部屋着に着替えて自分の部屋で寛ぐ。

そろそろかな、なんて携帯で時間を確認してから
名前を探して発信ボタンを押す。




『ふっかぁ？』


２コール目が途切れてすぐにAの声。
名前出てるから俺かって聞かなくても分かるだろうに。



深「Aちゃんのふっかだよ」

『……どうしたの？』

深「おぉい！スルーすんな」

『してない、してない。
　 色んな意味での“どうしたの？”だよ』




楽しそうな笑い声が可愛い。
佐久間語録から引用するとしたら、
確実に “鼓膜が喜んで”る。

それはさておき、何で電話したかって、
俺が取った大きいぬいぐるみを抱えて歩くAの足取りがなんだか不安だったからだよね。




『足元見てなくて段差に躓いちゃったんだけどね』

深「危ねぇなぁ…」

『ひぃくんがね、格好良かったの！！』




大丈夫だった？って聞いたら何故か照が格好良かったって話。

そりゃ照は格好良いのは知ってるよ。




『転ばないように助けてくれて本当格好良いし、謝ったらそうじゃないでしょって…』




確かに照はよく、ごめんをありがとうに言い直させてる。
Aは無意識なんだろうけど、まず謝るのが癖みたいになってるから。
俺らもありがとうって言ってもらう方が嬉しいからその照の発言には賛同できる。




『やっぱりひぃくんってモテるよねぇ』



そりゃ照はモテるよ。
え、なに、Aも照みたいなタイプがいいの？




深「俺もモテるよ？隣に居たら転びそうになるAも助けられるよ、きっと」

『うん……うん？』

深「…俺も格好良い、よな？」




きっと言わせようとしてる辺り格好悪い。
自分で分かってるんだけど言い出しちゃったら止まらなくて。




『…………』



……え、黙んないでよ。



深「おぉい！黙んなよ！」




結局こうしてふざけてしまう。
俺だって格好良いって言われたいんだけどなぁ。





『ふふ、ごめん。ふっかもモテるの知ってるよ』

深「お、おう」

『ふっかって優しいよね』

深「え……」

『今だって私が危なっかしかったから、ちゃんと帰れたか電話くれたんでしょ？』



図星なんだけど、ちょっと照れくさくて黙ってるとAは見透かしたようにくすくすと笑う。





『ありがとう、ふっか』




格好良いって言われたいとか思ったけど、
俺、優しいでいいわ。



こんなに可愛らしいAの声が聞けるなら。



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