＊part３＊ ページ3
息があがるくらい全力でAの家の方向に走れば、少し先に見える人影。
少しガタイの大きい男性と、あの小柄なのは……
「やめて！！離して！！！」
「いいじゃん、君可愛いしさ、ちょっと付き合えよ、一人だろ」
「やだ！！興味ないし、離せ！！」
「いてっ！お前俺を殴るなんて言い度胸じゃねぇか、調子に乗んな！！」
「なーんだモモか！あはは、だれかと思ったよ！私一人でも全然大丈夫だったのに！モモが喧嘩なんてできるわけ……」
「バカっ！！そんな恰好してるから襲われそうになるんだろっ！！！無防備すぎるんだよっ！！もう少し考えろよっ！！」
怒鳴った後に俺は気付いてしまう、Aの腕が振るえていることに。
俺に怒鳴られたからじゃない、その前からずっと……。
彼女に腕を振りかぶろうとする男の腕を俺はとっさに掴む。
なんだこいつ、見かけだけで全然力ないじゃん。
「なんだよお前！！」
「こいつに手ぇだすなよ！！さっさとどっかいけ！！」
男は俺に向かって何か言いたそうだけど、思い切りつかんだ手首を握れば勝てないと思ったのか大人しく逃げて行った。
サングラスがあって本当に良かった。
暗くて俺だって分かってないみたいだったし、万が一ばれて週刊誌にでももっていかれればユキだけじゃなくてオカリンにも迷惑かかるしね。
じゃなくて、振り返ると、Aがぺたんとへたり込んでいた。
「立てる？」
と聞けば彼女は俯いていた顔を上げた。
「だって……モモ、胸大きい子が好きなんでしょ……？」
「え？」
「私は！紡ちゃんみたいに可愛くもないし、ふわふわもしてないし、モモのタイプじゃないし、だけどそれでもモモに少しでも気にしてほしくて頑張って……頑張ってたのに……」
「それって……」
「私、初めて会った時からモモのこと……す……」
俺はへたりこむAを思いっきり抱きしめた。
「先に言うなよ……」
「モモ？」
少し話してみればまっすぐとこっちを見てくるハニーベージュの瞳、少し涙で潤んだ瞳がいつもより大人っぽくて、可愛くてたまらなくて……
「っ！ほらっ、帰るぞ！！」
「へ？」
「こんなとこずっといってマスコミに撮られたらお互いたくさんの人に迷惑かけるし、何より明日も撮影だろ？」
「うん、だけど、腰抜けちゃって……」
「……ほらっ」
背中を見せれば、彼女はきょとんとした顔をしたもんだから俺は少しだけ笑ってしまった。
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作者名：波瑠 | 作成日時：2019年7月9日 14時
