月の少女は口数が少ない その参

143話追跡 ページ48

こっそりと慎重にまきをさんの部屋へと進んで行き戸の前にご飯が置いてある部屋を見つけた



あそこがまきをさんの部屋…



目を瞑って部屋の様子を探る。人の気配は確かにするけど何故か物音が全くしない



本当に具合が悪くて寝ているの？



だけど…なんか嫌な気配がするし



少し考えてから私と伊之助は頷きまきをさんの部屋に突入することにした



ガッ



バンッ



『まきをさん！』



まきをさんの部屋の中はボロボロで争った形跡があった。でも中にはまきをさんの姿も嫌な気配の正体の姿もない



「(風…窓も開いてないのに…っ！天井裏！！やっぱり鬼だ！！今は昼間だから上に逃げたな)おいA！！」



『！』



伊之助は私を呼ぶとそのまま部屋の外に置かれていた丼を持ち



「おいコラバレてんぞ！！」



そう言って天井に丼を投げつけた



パキン



天井に当たって丼が割れると天井裏からドッと何かが暴れる音が響く



音が離れていってる。逃げるつもりだ！



「追いかけんぞ！」



『うん！』



音が聞こえる方へと走っていると先は突き当たりになっていて気配は行き止まりの壁をつたって移動ようとしている



伊之助はそのことに気づくと思いきり壁を殴ろうと拳を構える



「(ここだ！！)」



人の気配が近づいてくる！



『伊之助！待って！』



「おおっ可愛いのがいるじゃないか！」



ヒョコっと曲がり角から現れた男性客の顔面に伊之助の拳が迫る



ゴッ＿バキッ



「キャーーッ」



「殴っちゃった…！！」



倒れた男性客を見て顔を青ざめる遊女達を余所に私達は焦る



『伊之助！気配は！？』



「下に逃げてる！」



すぐに階段を下り、屋敷の中をあちこち探し回るが音の正体は見つからない



『気配が途絶えた…』



「クソッタレぇぇ！！邪魔が入ったせいだ…！！」

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