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Aは目にいっぱいの涙を溜めていた。勿忘草の瞳が溶けだしたかのような美しい涙だった。
そして俺の右手にほんの少し力を込めると、呟くように放った。
「…すき……」
聞こえた。確かにこの耳に届いた。
涙で瞳を揺らしながら、Aは言葉を紡ぎ合わせた。
「ゆういちろ、うのことが、ね、ずっと、すき、だったの…だいすきなの…」
ぽろぽろぽろぽろ、止めどなく溢れる涙も気にせず、Aは言った。
何かが胸の内に込み上げてきた。
例えるなら砕けた金平糖のように甘く、堪らなく愛おしい何か。
これは死ぬ間際の、神様からの贈り物なんじゃないかってくらい現実味がなかった。
皮肉だな。ずっとずっと恋焦がれてきた相手と死に際に同じ想いだと知るだなんて。
嬉しいのに。幸せなのに。
余計に生きたいと願ってしまうじゃないか。
「…俺も、お前のことが、ずっとずっと、すきだったっ……」
でも、このうちひがれるような恋心を打ち明けることが許されるのならば。
せめて、生きているうちに伝えたいじゃないか。
「…お祈りしよう…」
「お、祈り…？」
「…生まれ変わったら、今度こそ、一緒になれますようにって…」
神様も仏様も。
いないとわかっているはずなのに。
俺は無性に、縋りたくなってしまった。
今更って思われるかもしれないけれど。
俺は、神という存在を信じたかった。
ふとAを見ると、その勿忘草の瞳が閉じられる寸前だった。待ってくれ、待ってくれ。
その瞳を閉じないでくれ。
俺の思いとは裏腹に、鉛でも付いたみたいにAの瞼は今まさに閉ざされるところだった。
「…ありがとう……」
そう言って、Aはその勿忘草の瞳を固く固く閉ざした。
一筋の涙を代償に。
血濡れても尚美しいAの髪にそっと触れる。そしてその髪をそっと絡めるように梳いた。
「俺も…俺も…ありがとう、なぁ……」
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白霞(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。複数回読んで頂けたのですね…！感謝の限りでございます。そんな風に言ってくださりありがとうございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました！ (2020年9月15日 7時) (
レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - 何回でも見に来て涙腺崩壊させられてます。しかも作者様一人一人に返信までしてくださっていて…！作者様の良い人が滲み出ている…なんというか、はい、土下座したいくらい素晴らしい作品でした。このお話、ずっとずっと語り継がれていたらいいなぁ… (2020年9月2日 22時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて光栄の極みでございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました！ (2020年8月30日 21時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
シバ - あれ……………目の前がぼやけてきたぞ…… (2020年8月30日 11時) (レス) id: 344258cf85 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて感謝の限りです。最後まで閲覧頂きありがとうございました！ (2020年8月21日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白霞
| 作成日時：2020年6月20日 20時
