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「楽観的すぎるんだよ、どういう頭してんだ!
具合が悪いのを言わないで働いて身体を壊した母さんも、嵐の中薬草なんか摂りに行った父さんも!あんなに止めたのに…!母さんにも休んでって何度も言ったのに!」



「ゆ、ゆういちろ、」

「お前は引っ込んでろ。お前みたいな神様なんぞに願い事を託すような人間とは話をしてない!」



我ながら最低だと思った。彼女はただ善意で、俺と無一郎の仲を取り持とうとしてくれただけなのに。

自分の信仰しているものを貶され、とても傷ついていたと思う。俺に対して、多少なりの嫌悪感だって抱いたはずだ。

Aが伸ばてくれた手を俺は思いっきり振り払った。Aは嫌な顔をしなかった。代わりに、今にも涙を零しそうなとても悲しい表情をしていた。


俺は好きな奴にさえ、こんな顔をさせてしまうんだ。



俺は叫んだ。怒鳴り散らした。
人を助けることは選ばれた人間にしかできないと。あの両親の子供の俺達にできることは犬死にと野垂れ死にだと。結局はあの女に利用されるだとだと。



無一郎は目にいっぱいの涙を溜めて拳を握り締めて震えていた。
Aは羽織の裾をぎゅっと握り締めて下唇を噛み締めていた。その手は震えていた。

二人共、俺にそれ以上何かを言ってくることはなかった。



「この話はこれで終わりだ、いいな!さっさと晩飯の支度をしろ!A、お前はもう帰れ!」



Aは勿忘草の瞳に涙をいっぱい溜めてその場を立ち去った。でも、俺は気づいていた。



____Aが嗚咽を零しながら泣いていることに。

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白霞(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。複数回読んで頂けたのですね…!感謝の限りでございます。そんな風に言ってくださりありがとうございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年9月15日 7時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - 何回でも見に来て涙腺崩壊させられてます。しかも作者様一人一人に返信までしてくださっていて…!作者様の良い人が滲み出ている…なんというか、はい、土下座したいくらい素晴らしい作品でした。このお話、ずっとずっと語り継がれていたらいいなぁ… (2020年9月2日 22時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて光栄の極みでございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月30日 21時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
シバ - あれ……………目の前がぼやけてきたぞ…… (2020年8月30日 11時) (レス) id: 344258cf85 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて感謝の限りです。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月21日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年6月20日 20時

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