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「有一郎!無一郎!」



厚手の羽織に袖を通したAが俺達の家にやって来た。

季節は冬。息を吐けば雲のような、白い(もや)のようなものが現れ儚く消え去る。そんな寒い日々が続いている。



「あらあらAちゃん、寒くない?おいで、温まりなさい。」



母さんがAを手招きして家の中に入るよう促す。

律儀にお邪魔します、と言ってAは家の中に足を運ぶ。
そして一番に俺の元にちょこちょこと歩いて来た。


無一郎じゃなくて俺。俺の元に何の躊躇いもなく歩いて来てくれる姿に思わずぎゅっと心臓が掴まれるような感覚に陥る。



「有一郎、有一郎。」

「なんだ?」

「へへ、今日ね、紙飛行機作ったの。見て。」



Aはそう言って羽織の裾にしまっていた紙飛行機を取り出した。

その手はとても小さく、氷塊のように冷たそうだった。
だけど生憎、俺はAの手を温めてやる方法がわからない。


そしてAが取り出した紙飛行機は、不格好でお世辞にも綺麗とは言える形じゃなかった。けれどAが頑張って作ってきたことが窺えた。



「いつもよりは上手に折れたと思わない?」

「いつもよりはな。」



ここで一言「上手だね」と言えれば良いのに。
悲しいくらいに、俺はそんな気が利くような人間じゃない。



「A、僕にも見せて。」

「ふふ、良いよ。」



Aは持っていた紙飛行機を無一郎に手渡した。白魚のような腕が羽織の裾から見え隠れした。



「へぇ、上手だね。」

「ありがとう。」



無一郎に褒められるとあからさまに嬉しそうな表情をする。頬を少し色付け気恥しそうに視線を下に向ける。

そんなAを見て不覚にも胸がどきりとしてしまったことは俺だけの秘密。



「じゃあそれ無一郎にあげる。」

「え、いいの?」

「私いつも無一郎から紙飛行機貰ってるもの。まあ無一郎の作る紙飛行機よりは不格好だけど…」

「そんなことないよ。嬉しい。ありがとう、A。」



無一郎が嬉しそうに笑う。釣られてAも花が綻ぶような笑みを零す。

あの笑顔を向ける先が俺であったら。
そんなことを考える度に胸が締め付けられた。

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白霞(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。複数回読んで頂けたのですね…!感謝の限りでございます。そんな風に言ってくださりありがとうございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年9月15日 7時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - 何回でも見に来て涙腺崩壊させられてます。しかも作者様一人一人に返信までしてくださっていて…!作者様の良い人が滲み出ている…なんというか、はい、土下座したいくらい素晴らしい作品でした。このお話、ずっとずっと語り継がれていたらいいなぁ… (2020年9月2日 22時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて光栄の極みでございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月30日 21時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
シバ - あれ……………目の前がぼやけてきたぞ…… (2020年8月30日 11時) (レス) id: 344258cf85 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて感謝の限りです。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月21日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年6月20日 20時

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