苦い淡い恋心。【黄】 ページ23
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いつもと同じ朝、だけど少し違う。
『おはよ、』
ずっと好きだった君が居る。
「おはよ、朝飯食う?」
『ん、お腹空いたなぁ。』
未だ寝惚けて居るのか薄らと開いた瞳は俺に向けられない。
優しく頭を撫でると ふふ、と笑い声が聞こえる。
「じゃあ作ってくんね。」
緩んだ口元を隠すべくベッドから足を出せば昨夜の出来事を
思い出させるんだ。
そうして少し動けないでいると、
『あ、思い出してたでしょ。えっち。』
振り返ると君はこっちを向いて口元まで布団で隠し
にやりと笑っていた。
その姿があまりにも愛おしくて、つい顔に熱が集まる。
床に散らばった衣服を集めて肌に纏うとやっとで立ち上がった。
キッチンで適当に朝食を作ってテーブルに並べていると
『美味しそ、』
という言葉と共に君が現れた。
俺の服一枚だけを着て。
「..A、コーヒーはブラック?」
『んーん、ラテ。』
甘いのが好きだよ、と愛嬌のある笑顔で。
向かい合わせに座って手を合わせて挨拶をする姿も
口いっぱいに入れて食べる姿も、全部が愛おしい。
『照が旦那さんになってくれる人生どこ?』
「お前が望むなら今すぐにでも、」
そういうと君は嬉しそうに笑うんだ。
朝食を終えると慣れた手つきで食器を洗っていく君。
いいよ、と言ったものの
『私食器洗うの好きなの!』
という押しに負けて洗って貰う事にした。
近くの椅子に座って携帯を弄っているとシンクから
『浮気ー?』
無邪気な声でクスクス笑いながら言う君。
「違いますー。」
『嘘だー。』
「Aしか興味ないって昨日も言った。」
君は頬を染めて少し困った顔をした。
「返答に困るなら最初から言うなっての。」
小さな俺の呟きはきっと彼女には届いていない。
洗い物を終えたのか小走りで俺の元まで来て
小さい椅子に一緒に腰掛けようとお尻で押してくる。
「..あっち座れよ。」
『やだ、ここがいい。』
少し頑固で子供っぽい所も君の魅力なんだ。
渋々座らせてあげたのは俺の膝の上。
ルンルンで座っては
『今日何する?』
コテンと首を傾げて問い掛けられる。
「映画観る?アニメが良い?」
『アニメ最近観てないな、流行りのやつ教えて。』
『それから宅配で照の好きな飲み物頼も!』
「おー、とっておきのやつAに教えてやるわ。」
やった、と喜ぶ君の左手薬指には邪魔な光。
『..でも夕方には帰んなきゃ。』
そんな悲しい顔で言うなら思い出すなよ。
俺と居る時くらい、
「今は忘れな。」
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作者名:Rabiy. | 作成日時:2020年9月9日 7時