紙切れ一枚に言葉は要らない。【青】 ページ22
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君を好きになった日、世界が変わった気がした。
何気ない日常の中に華が咲いたようで、
毎日が楽しく、そして美しく夢のような日々に変わった。
たった一つの趣味以外に没頭出来るものがなく
ただ仕事をこなして家に帰り、寝る。
こんな日常をもう数十年続けている。
そんなある日、友人に食事に誘われた。
「○太、遅ぇぞー。」
「悪い悪い、仕事長引いちゃって..って、え？」
一瞬にして心を奪われる感覚。
一目惚れとは本当にこの世に存在するらしい。
『す、すみません。お邪魔してます！』
長い髪を耳に掛けて少し勢いをつけて立つ彼女。
スーツ姿は妙に色気を感じる。
「俺の長い友人、○太に紹介しようと思って。」
「何で急に。」
「出会いないーってずっと喚いてるから。」
「うるせぇ。」『うるさい。』
「おー、ハモるくらい合うんじゃね。」
ふっかは酒も入っているからかいつも以上に良く喋る。
『あ、私Aって言います。渡辺さん..ですよね？』
辰哉くんからよく話を伺ってます。と少し高い声ではあるが
品のある媚びない落ち着いた口調。
元々上がり気味の口角を更に上げて挨拶をしてくれる。
彼女の前の席、ふっかの隣に座って
「はい、渡辺○太です。ふっか変な事喋ってないといいけど。」
そう言うとクスクス笑い出す彼女に、何か言ってんな、と
ふっかの方を見ると
「俺は何も言ってないよ？ね？」
『辰哉くんはお酒入ると覚えてないんだから。』
口元に手を当てて話す彼女には魅力を感じられずにはいられない。
「お前、何か言っただろ。」
『なべは抜けてる所があるけどいい奴、幸せになってほしい。』
「え、」
『そう言ってましたよ。先日は。』
大きな瞳を此方に向けて何処か真剣な表情で告げる彼女。
そこからお酒を頼んで談笑をしていた、ふっかはほぼ寝てるけど。
終電が過ぎ去る頃、
『終電！』
「タクシーで帰ろ。」
慌てている彼女にそういうと渋々頷く.
「お手洗い行ってきます」と席を立たれると
すぐにお会計を済ました。
酔ったふっかを肩に抱えて店から出ようとすると
後ろから彼女が来て『お会計！』というので
「それより先にこいつ。」
店の前のタクシーに連れていき二人を乗せる。
その際も会計の事で口を開こうとするので
ドアを開けたままの状態で、一枚の紙を渡した。
『これって、』
「いつか俺も○太って呼ばれたい。」
頭をポンと撫で車から出る。
タクシーが走り出すと、次の物へ。
紙切れ一枚、恋の魔法。
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作者名：Rabiy. | 作成日時：2020年9月9日 7時
