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過去の想いが。【黒】 ページ21

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仕事が早く終わった日。
早く、と言っても21時頃。散歩がしたくなって
マネジャーさんには送迎を断った。

キラキラと光る街並み。
昼時は暖かくても夜になるとやはり少し肌寒い。

「あーあ、もう冬か。」

そんな事を呑気に空を眺めつつ歩いていたら
ドンッと割とな勢いで人がぶつかってきた。

「あ、すいませ..」
『いえ、こちらこそすみません!』

小さな体、柔らかく甘い香り。
彼女が顔を上げた瞬間に思い出す光景。

「え、A?」
『目黒くん..!』

高校の時に同じクラスだった彼女だった。
学年一モテる、とかじゃなく俺の中でモテていた子。
つまりは俺の好きだった子。

『うわ、久し振りだね。高校の卒業式以来でしょ。』
随分有名になっちゃって。と笑いながら言う彼女は
あの頃から何も変わっていない。

「仕事終わり?」
『うん、目黒くんも?』
「今日早く終わったから散歩。」
『もう21時だよ、ご飯食べてる?』

母親みてぇと思いながら他愛もない話を交わしてた。
すると彼女の携帯が鳴り、見るつもりはなかったが見えて
しまった画面には異性の名前。

「出ねぇの?」
『あー、うん。元彼なんだ。最近しつこくて。』

あからさまに表情を曇らせた彼女に俺はまだ好意が
残っていたのだろうか。
携帯を手に取って通話ボタンを押す。

「もしもし、Aに何か用ですか。」
「俺が居るんでもう心配しないでください。」

相手の言葉を一切聞き入れずに言うだけ言って切った電話。

少しして我に返った俺は画面を服で拭いて
急いで彼女に返した。

「ごめん、急に。」
『ううん!ありがとう。』

ゆるりと偽りのない笑みで俺を見上げる小さな彼女に
過去の想いが蘇ってくる。

「あんさ、連絡先教えてよ。」
『いいの?大丈夫?』
「大丈夫、二人だけの秘密ね。」

俺普段こんな事言わねぇ、と内心照れつつ得た連絡先。

「寒いのに引き止めちまって悪い。」
『何で。久し振りに話せて楽しかったよ。』

そんな笑顔向けられちゃダメになるだろ。
俺は三年間気持ちを伝えず、卒業式の日に蓋をして
今まで過ごしてきたのに。簡単にこじ開けんなよ。

『どうしたの、そんな難しい顔して。』

「好きだ、これからは俺の事意識して見て。」

覗き込む彼女が愛おしくて溢れた言葉。
心臓が暴れ出して今にも口から出そう。

『..うん、わかった。蓮くん。』

俺の想像を上回る返しにこっちの瞳が大きくなる。

「なあ、反則だろ。」

あざとい彼女に振り回されるのも悪くない。

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紙切れ一枚に言葉は要らない。【青】→←黒い珈琲の意味。【赤】



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作者名:Rabiy. | 作成日時:2020年9月9日 7時

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